都道府県を選択して、裁判官を探すことができます

全国 2522 人の裁判官3092 件の口コミ
下級裁

覚せい剤取締法違反被告事件

判決データ

事件番号
令和1う284
事件名
覚せい剤取締法違反被告事件
裁判所
名古屋高等裁判所
裁判年月日
2020年2月25日
裁判種別・結果
破棄自判
裁判官
堀内満田中聖浩山田順子
原審裁判所
名古屋地方裁判所

AI概要

【事案の概要】 本件は、被告人が交際相手の男性A(26歳)と共謀の上、平成30年7月26日、名古屋市内のホテル客室において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する水溶液を自己の身体に注射し、もって覚せい剤を使用したとして起訴された覚せい剤取締法違反事件の控訴審である。 被告人は、夫が経営する飲食店の役員であったところ、夫が協力雇用主として出所後に雇用したAと不倫関係となり、Aから頻繁に暴力を振るわれ、合計1000万円以上の金銭を要求されるなど支配的な関係に陥っていた。本件注射当日までの約2か月間、Aから殴打等の激しい暴力を受け、ライター投擲による鼻部傷害や両目下の内出血等を負っていた。本件注射の際、被告人はAから差し出された注射器を受け取り、准看護師資格を有する被告人自身が左腕に注射針を刺し、Aが押し棒を押して覚せい剤を注入する方法で薬物を使用した。被告人は、薬物が覚せい剤である可能性を認識していたが、拒否すればAから暴力を振るわれることを恐れて拒絶できなかった旨供述した。 原審(名古屋地裁)は、被告人が暴力を恐れてAの意に反する行動をとることが困難な心理状態にあり、「Aに本件注射をしてもらおうという主体的な意思」があったと評価することは困難であるとして、覚せい剤使用の故意及びAとの共謀を否定し、無罪を言い渡した。これに対し検察官が事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 争点は、(1)覚せい剤使用の故意及び共謀の成否、具体的には故意の認定に「薬理効果を得ようとする主体的な意思」が必要か、(2)Aからの暴力を恐れた被告人の心理状態が期待可能性を欠く極限的事態にあたるか、である。 【判旨(量刑)】 名古屋高裁は、原判決を破棄し、被告人を懲役6月(執行猶予2年)に処した。 故意の内容について、覚せい剤使用の故意は覚せい剤をその用法に従って用いる一切の行為を認識・認容すれば足り、それ以上に薬理効果を得ようとする意思や主体的な意思・意欲は必要とされないと判示した。被告人は、注射器内の薬物が覚せい剤である可能性を認識し、針を刺せばAが押し棒を押して薬物が体内に取り込まれることを予見しながらあえて自ら針を刺したのであるから、認識・認容ともに欠けるところはなく、Aとの共謀も認められるとした。 期待可能性の有無については、故意・責任阻却は客観的にみて心理的強制下において行われた極限的事態において初めて肯定されるべきであり、本件においては、被告人がAに対し好意・愛情が完全に失われていたわけではなく、翌27日にAに覚せい剤使用を思いとどまらせた事実や、本件注射の実行態様(被告人自身が針を腕に刺している)等を踏まえると、覚せい剤使用を許容する気持ちが存在していたことまでは否定できず、極限的事態とはいえないとした。 本件は、DV的支配下にある者の薬物使用事犯について、故意の規範的構造と期待可能性の限界を明示した事例として実務的意義を有する。量刑については、共犯者の影響が大きく、覚せい剤依存性が高くないこと、前科前歴がないことなど酌むべき事情を考慮し、主文の刑に執行猶予を付した。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。