AI概要
【事案の概要】 本件は、特許第3887248号「コンクリート造基礎の支持構造」(被告・大林組及び大成建設が特許権者)について、原告が請求した特許無効審判が不成立とされたため、原告が審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 本件特許は、コンクリート造基礎を鋼管中空杭又は場所打ちコンクリート杭に載置した状態で支持する構造であって、杭頭部のコンクリートの設計基準強度を、コンクリート造基礎のコンクリートの設計基準強度よりも大きくすることを特徴とする発明に係るものである。従来、杭と基礎を剛接合とした場合に過大な曲げ応力等が生じるという問題があったことから、載置方式を採用して両者の相互拘束を回避しつつ、杭頭部への支圧力集中による損傷を防ぐため、杭頭部側のコンクリート強度を相対的に高く設定する点に本件発明の技術的特徴がある。 原告は、場所打ちコンクリート杭と基礎を扱う文献(甲1)、仕切りケースを介して杭頭とフーチングを縁切りする構造の公開公報(甲2)、PHC杭の杭頭接合実験に関する文献(甲3)を主引例として、新規性・進歩性の欠如、明確性要件違反、サポート要件違反、実施可能要件違反を主張した。 【争点】 争点は、(1)甲1発明との対比における相違点2(杭頭部のコンクリート強度を基礎のそれより大きくする構成)の進歩性判断の当否、(2)甲2発明を主引例とする場合の進歩性判断の当否、(3)甲3発明(PHC杭を用いた剛接合構造の実験)から場所打ち杭を用いた載置構造への置換の容易想到性、(4)「設計基準強度」という特定による明確性要件違反の有無(プロダクトバイプロセスクレームに該当するか)、(5)本件構成により課題を解決できると当業者が認識できるかというサポート要件の充足性、及び(6)実施可能要件の充足性である。 【判旨】 知財高裁第2部(森義之裁判長)は、原告の請求をいずれも棄却した。 まず進歩性について、甲1発明は場所打ちRC杭の模型実験に関するものであり、杭と基礎の設計基準強度の大小関係に着目した記載はなく、また甲4〜7その他の証拠にも相違点2に係る構成を示唆する記載はないから、当業者が容易に想到し得たとは認められないとした。甲2発明は仕切りケースにより杭と基礎を完全に縁切りする構造であって芯鋼材を配筋する動機付けを欠き、甲3発明はPHC杭を用いた剛接合実験を前提とするから、場所打ち杭を用いた半剛接合構造への置換を当業者が容易に想到するとはいえないと判断した。PHC杭と場所打ちコンクリート杭では求められるコンクリート強度も異なる旨の技術的知見も示されている。 明確性要件違反の主張に対しては、「設計基準強度」はコンクリートの材質を特定するものであって製造方法を記載したものではなく、プロダクトバイプロセスクレームには当たらないと判示した。サポート要件については、本件構成により杭頭部の損傷等防止という課題を解決できると当業者が認識できると認め、実施可能要件についても本件明細書に鋼管中空杭・場所打ち杭それぞれの実施形態が具体的に記載されていることから充足するとした。 本判決は、設計基準強度という設計上のパラメータの大小関係を構成要件とするクレームの技術的意義と、載置構造における主引例からの進歩性判断の枠組みを示したものとして、建築構造分野の特許実務上参考となる。