AI概要
【事案の概要】 本件は、東京都世田谷区から杉並区にかけての都市計画道路事業(放射第23号線及び環状第7号線の一部区間、延長約1005メートル、幅員25〜33メートルの道路整備)の事業認可の取消しを求めた事案である。関東地方整備局長は、国土交通大臣から権限の委任を受け、平成27年12月3日付けで、東京都(被告参加人)の申請に基づき、都市計画法59条2項に基づく本件事業認可を行った。これに対し、事業地内の不動産に権利を有する者や居住者ら18名が原告となり、本件事業認可の違法を主張してその取消しを求めた。本件道路の都市計画は、昭和21年の戦災復興都市計画街路に関する決定に遡り、昭和41年に建設大臣による変更決定(本件都市計画)で整備対象に含められたもので、以後約50年間、変更されないまま推移していた。原告らには、収用地内に土地建物の所有権等を有する地権者原告8名、居住のみする居住原告7名、かつて居住していたが現在は別所に住む非居住原告3名が含まれていた。 【争点】 争点は、(1)原告適格の有無、(2)本件事業認可の適法性である。事業認可の適法性については、前提となる昭和21年決定及び昭和41年決定の手続上の適法性、昭和41年決定の実体上の適法性(裁量権の逸脱・濫用の有無)、さらに昭和41年決定後の社会・経済情勢の変化を踏まえて、本件事業認可時点において都市計画を変更すべきことが明白であったかが問題となった。特に、原告らは、長期間の経過により本件道路の整備の必要性は失われ、代替案の合理性が高まり、高齢者を含む住民に著しい犠牲を強いるものとなっていたと主張した。 【判旨】 東京地裁は、まず非居住原告3名については、収用地内の土地建物につき権利を有せず居住もしていない以上、法律上保護された利益の侵害のおそれがないとして、原告適格を欠く不適法な訴えとして却下した。その余の地権者原告・居住原告については原告適格を認めた。本案については、昭和21年決定は戦災復興院官制下で主務大臣(内閣総理大臣)の決定として適法に行われ、昭和41年決定も建設大臣により手続要件を満たして決定されたものであり、いずれも手続上の違法はないとした。また、昭和41年決定の内容も、甲州街道ルートの交通渋滞解消、B給水所用地の最大限活用等の観点から合理性を備えており、建設大臣の裁量権の逸脱・濫用は認められないと判断した。さらに、都市計画決定後に事情変更があっても一旦適法に成立した都市計画が遡って違法になることはなく、都市計画法21条1項に基づき変更すべきことが明白といえる特段の事情があって初めて、これを看過した事業認可が違法となるとの一般論を示した上で、第3次事業化計画(平成16年)における必要性検証で本件道路が優先整備路線に選定されており、将来交通量も基準値を大きく上回ること、原告代替案(給水所ルート改修案、直結案等)も合理性を欠くこと、住民の犠牲は都市計画法が予定する収用制度の範囲内にとどまることから、本件事業認可時点で本件都市計画を変更すべきことが明白といえる事情は存しないとして、本件事業認可は適法であると結論付け、その余の原告らの請求を棄却した。本判決は、長期間変更されない都市計画に基づく事業認可の適法性審査の枠組みとして、事情変更による違法性判断の「特段の事情」基準を具体化したものとして、都市計画行政法の実務に示唆を与える判断である。