特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、半導体及び関連材料の製造販売等を業とする日亜化学工業(原告)が、テレビ等の開発・製造販売を業とする東芝映像ソリューション(被告)に対して、特許権侵害に基づき差止め・廃棄及び損害賠償を求めた事件である。 原告は、発光ダイオード(LED)に関する3件の特許権(「発光装置と表示装置」に関する特許第5177317号、「発光装置、樹脂パッケージ、樹脂成形体並びにこれらの製造方法」に関する特許第6056934号及び特許第5825390号)を保有していた。これらは、白色LEDの基本的構造や樹脂パッケージ型LEDの製造方法に関する技術であり、液晶テレビのバックライト等に広く用いられている。 原告は、被告が平成26年1月から輸入・販売していたデジタルハイビジョン液晶テレビ(被告製品1・2)に搭載されていたLED(1台あたり24個搭載)が原告の3特許の技術的範囲に属すると主張し、被告に対し、特許法100条1項・2項に基づく製品の生産・譲渡・輸入等の差止め及び廃棄、並びに民法709条に基づき1億3200万円の損害賠償金の支払を求めた。被告製品に搭載されていたLEDは、被告や東芝ライフスタイルではなく海外メーカーが設計・製造したものであった。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品に搭載された本件LEDが本件各特許発明の技術的範囲に属するか、(2)本件各特許にサポート要件違反・進歩性欠如・明確性要件違反等の無効理由が存在するか(特許法104条の3の権利行使制限の抗弁)、(3)原告が行った特許3についての訂正請求により無効理由が解消するか、(4)差止・廃棄の必要性及び損害額(特許法102条3項の実施料相当額)である。 【判旨】 東京地裁は、本件LEDが本件発明1(白色系を発光するLEDの構成要件)及び本件発明2(樹脂パッケージ型LEDの製造方法)の技術的範囲に属し、また本件訂正後発明3の技術的範囲に属すると認定した。サポート要件違反、進歩性欠如、明確性要件違反等として被告が主張した各無効理由はいずれも認められず、訂正要件も具備していると判断され、被告による本件LEDを搭載した被告製品の製造販売等は、原告の本件各特許権を侵害するとされた。 もっとも、被告製品1の販売は平成28年3月、被告製品2の販売は平成28年12月にいずれも終了しており、口頭弁論終結時点(令和元年12月)からは約3年が経過し、販売再開の可能性もうかがえないとして、差止請求及び廃棄請求はその必要性がないとして棄却された。 損害額については、特許法102条3項の実施料相当額として、液晶テレビ用バックライトLEDの世界的平均価格(1個約9円、24個分で216円)を基礎に、本件特許権1のみ侵害対象の期間は5%、本件特許権1と3の双方が侵害対象となる期間は8%の実施料率を乗じ、被告製品1台当たり20円又は30円と算定された。これに本件LEDが被告製品のバックライトとして重要な役割を果たすこと、原告の市場シェアや原則他社へ実施許諾しない方針等を考慮し、損害額1645万6641円に弁護士費用150万円を加算した1795万6641円及び遅延損害金の支払を認容し、その余の請求は棄却された。本判決は、LEDという部品単位の特許に基づく最終製品(テレビ)の売上を基準とする損害算定の考え方を示した点で、実務上参考となる事案である。