AI概要
【事案の概要】 原告(コンピュータシステム開発会社)は、被告(有価証券報告書編集ソフトウェア「X-Smart」を提供する会社)に対し、原告が創作したプログラム「X-Smart簡易組替ツール」について著作権(複製権・公衆送信権)侵害があったとして、著作権法114条3項に基づき1億8000万円の損害賠償を請求した事案である。同プログラムは、金融商品取引法に基づく電子開示システム(EDINET)で必要となるXBRL形式の開示書類を作成するため、エクセルファイル等の取込機能と勘定科目から開示科目への簡易組替機能を有するものであった。原告は、被告の完全子会社であるDI社から開発を受注し、下請会社への委託や自社従業員による開発を経て同プログラムを完成・納品したが、被告がこれをクラウドサーバ上で顧客に提供したことが著作権侵害に当たると主張した。 【争点】 主な争点は、(1)本件プログラムが著作物といえるか、(2)原告が著作権を有するか、(3)著作権侵害の成否、(4)被告の故意・過失の有無、(5)損害額であった。中心的争点は本件プログラムの著作物性であり、原告は、約4万ステップのソースコードにおけるドロップダウンリスト生成、サブルーチン化、条件分岐・ループの記述方法、変数設定、チェック処理、デバッグログ、コメント等に創作的表現があると主張した。被告は、DI社提供の資料や開発ツールに沿って作成されたにすぎず、いずれも一般的な記述であると反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、プログラムが著作物であるためには、指令の表現自体・その組合せ・表現順序からなるプログラム全体に選択の幅があり、かつ、ありふれた表現ではなく作成者の個性が表れていることを要すると判示した。その上で、原告が創作的表現として主張した各ソースコードについて、(1)ドロップダウンリスト生成はASP.NET環境で一般的な手法であること、(2)サブルーチン化は高校教科書にも記載される基本的技術であること、(3)switch文・for文・foreach文等の条件分岐やループの選択はいずれも基本的制御文の使用にすぎないこと、(4)条件演算子の使用もif文と代替可能な一般的手法であること、(5)TryParseメソッドの使用も標準機能の一般的利用であること、(6)デバッグログの挿入も一般的な開発手法であること、(7)コメントはコンピューターに対する指令を構成せずプログラムに当たらないことを認定し、いずれも作成者の個性が表れているとは認められないと判断した。また、ソースコードの分量が膨大であることや機能の特殊性のみでは著作物性を基礎付けられないとし、本件プログラムの著作物性を否定して請求を棄却した。