遺族厚生年金不支給処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、平成17年に結婚紹介所のお見合いでAと知り合い、すぐに交際・同棲を開始した。婚姻届を出そうとしたが、Aの母親Bに強く反対されたため断念し、同じ氏を名乗って夫婦として生活するため、平成18年にAを養父、原告を養子とする養子縁組を行った。原告とAは結婚式を挙げ、結婚指輪を購入し、新婚旅行にも行き、周囲からも夫婦と認識されていた。Aが平成29年に死亡したため、原告が遺族厚生年金の裁定を請求したところ、厚生労働大臣は、両者が戸籍上の養親子関係にあり配偶者としての請求を認められないとして不支給決定をした。原告は審査請求を経て本件取消訴訟を提起した。 【争点】 原告が厚生年金保険法3条2項にいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に該当し、遺族厚生年金の支給を受けることができる配偶者に当たるか。養親子間の内縁関係は民法736条(養親子関係者間の婚姻禁止)に抵触するため、反倫理性・反公益性の程度と、遺族の生活安定という厚年法の目的を優先させるべき特段の事情の有無が問題となった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容し、不支給決定を取り消した。まず、厚年法が内縁の配偶者にも遺族厚生年金の受給資格を認めた趣旨は、遺族の生活の安定と福祉の向上にあるが、民法の婚姻法秩序に反する内縁関係にある者まで一般的に配偶者に当たるとは解せないとした。そのうえで、養親子間の内縁関係であっても、その反倫理性・反公益性が婚姻法秩序維持等の観点から問題とする必要がない程度に著しく低い場合には、厚年法の目的を優先させるべき特段の事情が認められるとの判断枠組みを示した。本件では、原告とAは養子縁組以前から夫婦としての共同生活の実体を有しており、養子縁組は同じ氏を名乗るための手段にすぎず、真に親子関係を構築する意図は皆無であったこと、約11年間夫婦として円満な共同生活を継続し周囲からも夫婦と認識されていたことから、反倫理性・反公益性は著しく低く、特段の事情が認められるとして、原告は厚年法上の配偶者に該当すると判断した。