AI概要
【事案の概要】 被告人は、金品窃取の目的で、平成30年4月17日午後11時45分頃、大阪市内のマンション302号室に玄関から土足で侵入し、室内の本棚を物色したが、家人がいることに気付いて逃走し、目的を遂げなかったとして、住居侵入及び窃盗未遂で起訴された。被告人は同マンション502号室の住人であり、障害等級2級の判定を受けて障がい者手帳の交付を受けていた。弁護人は、被告人は302号室に立ち入っておらず、仮に立ち入ったとしても住居侵入及び窃盗の各故意がなく、責任能力も欠いていたとして無罪を主張した。 【争点】 (1) 被告人が302号室に立ち入った事実が認められるか、(2) 被告人に住居侵入及び窃盗の各故意が認められるか、(3) 被告人の自白調書の任意性・信用性が認められるかが争われた。 【判旨】 裁判所は、被害者Aの供述に高い信用性を認め、被告人が302号室に立ち入り本棚に向かって何かを触っていた事実を認定した。しかし、以下の事情を総合的に考慮し、被告人に金品窃取の目的及び住居侵入・窃盗の各故意を認定するには合理的な疑いが残ると判断した。すなわち、①被告人が302号室にとどまった時間はせいぜい1分間に満たない程度であったこと、②被告人は自転車の鍵を忘れて502号室に取りに戻ろうとしていたこと、③302号室と502号室は同じ間取りで302号室の玄関扉は無施錠であったこと、④被告人は器質性精神病により判断能力や知能等が全般的に低下した状態にあったこと、⑤現に被告人は本件直後にも混乱した状態で502号室と間違えて402号室のドアを開けようとしていることである。また、被告人の自白調書についても、取調官が客観的状況と整合しない供述に対し執拗かつ誘導的な追及を繰り返した結果、被告人が迎合的に供述したものと認められ、全体として任意性に疑念が生じるとして証拠から排除した。仮に証拠能力が否定されないとしても、いわゆる秘密の暴露がなく信用性も認められないとした。以上から、犯罪の証明がないとして被告人に無罪を言い渡した(求刑:懲役1年)。