監禁,保護責任者遺棄致死
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人両名(夫婦)は、統合失調症及び自閉症と診断された実娘A(当時33歳)を、平成14年ないし15年頃から大阪府寝屋川市の自宅敷地内プレハブ小屋に設置した約1.5畳の居室(南北150cm×東西112cm、窓なし)に閉じ込め、内側から解錠できない扉を外側から施錠し、監視カメラで動静を監視しながら、1日1回の食事を差し入れるほかはほとんど関わりを持たない生活を約10年間にわたり継続した。Aは衣服を身に着けず、毛布にくるまって過ごしていた。平成29年12月上旬頃、被告人両名は暖房装置のサーモスタットを前年の設定温度(摂氏15度)より低い摂氏10度に設定したため室温が低下し、同月18日頃、Aは低栄養及び寒冷環境曝露により凍死した。死亡時の体重は19kg(身長145cm、BMI9.0)で、極度の低栄養状態であった。被告人両名は監禁罪及び保護責任者遺棄致死罪で起訴された。 【争点】 主な争点は4点あった。第1に、被告人両名の行為が客観的に監禁に当たるか及び故意の有無である。弁護人は内側扉が常に施錠されていたとは認められないと主張したが、裁判所は、監視カメラ映像で食事の出し入れ時にほぼ毎回施錠音が確認できること等から基本的に施錠されていたと認定し、監禁の成立を認めた。第2に、本件行為の社会的相当性(違法性阻却)である。弁護人はAの統合失調症の症状に合わせた療養目的であり黙示の承諾もあったと主張したが、裁判所は、約10年間の極めて狭小な空間への監禁は人間の尊厳を害する不適切なものであり、Aは正常な判断能力を欠いていたため有効な承諾もないとして違法性阻却を否定した。第3に、Aの死因である。弁護人はリフィーディング症候群の可能性等を主張したが、解剖医の鑑定に基づき低栄養及び寒冷環境曝露による凍死と認定された。第4に、不保護罪の故意の有無である。弁護人は被告人両名にAの要保護状況の認識がなかったと主張したが、裁判所は、監視カメラでAの極度の痩身を認識し、自らサーモスタットを摂氏10度に設定した以上、要保護状況の認識があったと認定した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人両名をそれぞれ懲役13年(求刑どおり)に処した。量刑理由として、監禁について、畳1畳分程度の極めて狭小な空間で約10年間にわたり監禁を継続したことは人間としての最低限の尊厳をも否定する非人道的な行為であること、当初は被害者の症状に対応する面があったものの、その後は監護意欲を失い医師の診察も受けさせず不適切な方法を漫然と継続したことを指摘した。保護責任者遺棄致死について、検察官が主張するような被害者が自分達より長生きしないことを意図した犯行とまではいえないものの、事態の発覚を恐れ被害者の状態を憂慮することなく漫然と現状を維持し続けた態度は余りに無責任であるとし、被害者が人間らしく扱われないまま死亡した結果の重大性を重視した。