AI概要
【事案の概要】 被告人は、平成28年10月3日、自宅において、生後約1か月半の次男Aの頭部を複数回揺さぶるなどの暴行を加え、急性硬膜下血腫等の傷害を負わせて死亡させたとする傷害致死の公訴事実で起訴された。原審(大阪地裁)は、Aの受傷原因が揺さぶりによるものか合理的な疑いが残ること、受傷時期が妻及び長男の外出後(午後1時30分頃以降)と断定できず犯人性も認められないとして無罪を言い渡した。検察官が訴訟手続の法令違反及び事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 (1) 原審が被告人の捜査段階の供述調書(乙14号証ないし18号証)を任意性に疑いがあるとして却下した訴訟手続に法令違反があるか。 (2) Aの受傷原因は揺さぶりによるものか(脳神経外科医C・小児科医Dの「揺さぶり」意見と、脳神経外科医Eの「打撲」意見の信用性評価)。 (3) Aの受傷時期は妻及び長男の外出後に限定されるか、被告人の犯人性が認められるか。 【判旨(量刑)】 控訴棄却(原審無罪を維持)。 第一に、証拠調べ請求却下の訴訟手続について、原審裁判所が乙14号証ないし18号証を任意性に疑いがあるとして却下したことは正当であり、法令違反の主張は理由がないとした。 第二に、受傷原因について、控訴審は原審と異なる判断を示した。頭蓋内出血に関し、専門家C及びDの各供述は信用でき、Eの供述はCT画像の読み取りの誤り、適切な自験例・文献例の欠如等から採用できないとした。眼底出血についても、眼科医Fの供述が信用でき、Eの指摘はAの具体的症状と整合しないとした。法医学者Iの「揺さぶりなら首に損傷があるはず」との指摘も、揺さぶり方法の前提が不適切であり、頸部損傷の検査が行われていないことから判断に影響しないとした。以上から、Aが揺さぶりにより受傷した事実は合理的疑いなく認められるとし、この点の原判決の判断は論理則・経験則に照らし不合理であるとした。 第三に、犯人性について、一次性脳実質損傷の存在を認め、受傷後の意識清明期は最大15分程度と認定したものの、受傷時期は午後1時15分頃以降の可能性があり、妻及び長男の外出前に受傷していた可能性を否定できないとした。妻には育児ストレスによる衝動的暴行の可能性が、長男にもAと二人きりになった時間及びだっこした事実があり、両名による暴行の可能性が合理的疑いをいれない程度に否定されていないとした。結論として、被告人の犯人性について常識に照らし間違いないといえるほどの立証がされていないとした原判決の結論に誤りはないとして、控訴を棄却した。