建造物侵入,殺人,殺人未遂,逮捕致傷,逮捕,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29わ212
- 事件名
- 建造物侵入,殺人,殺人未遂,逮捕致傷,逮捕,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
- 裁判所
- 横浜地方裁判所
- 裁判年月日
- 2020年3月16日
AI概要
【事案の概要】 被告人は、神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」の元職員である。被告人は、重度障害者は不幸を生む存在であり安楽死させるべきであるとの考えを抱くに至り、平成28年7月26日午前1時43分頃、同施設に侵入した。被告人は、まず夜勤職員5名の両手首を結束バンドで緊縛するなどして身体の自由を奪った上で、入所者43名に対し、柳刃包丁等でその身体を突き刺すなどし、19名を殺害し、24名に傷害を負わせた。被告人は、会話ができるかどうかで殺害対象を選別し、途中から刺しやすい首を狙うなど、計画的かつ冷静に犯行を遂行した。犯行後、被告人は自ら警察に出頭した。起訴罪名は、建造物侵入、殺人19件、殺人未遂24件、逮捕致傷2件、逮捕3件及び銃砲刀剣類所持等取締法違反である。 【争点】 最大の争点は、犯行時における被告人の責任能力の有無及び程度であった。弁護側は、被告人が大麻の長期常用により慢性の精神病(大麻精神病)を発症しており、犯行時は心神喪失の状態にあった、又は少なくともその疑いが残ると主張し、無罪を求めた。これに対し検察側は、被告人には完全責任能力があったとして死刑を求刑した。被告人自身は公判で起訴事実を認めていた。 【判旨(量刑)】 横浜地裁(青沼潔裁判長)は、令和2年3月16日、裁判員裁判により被告人を死刑に処した。まず責任能力について、裁判所は、被告人の犯行動機が園での勤務経験や見聞きしたニュースを基に形成されたものであり、「重度障害者を殺害すれば不幸が減り、安楽死させる社会が実現すれば世界平和につながる」との考えは了解可能なものであって、病的な思考障害によるものとは言えないと判断した。犯行態様についても、殺害対象の選別、刺突部位の変更など動機を逸脱した不合理な言動がなく、合目的的に行動していることから、大麻又はこれに関係する精神障害が犯行に影響を与えたとは考えられないとして、完全責任能力を認めた。量刑については、19名もの人命が奪われた結果は他の事例と比較できないほど甚だしく重大であり、自力で助けを求めることが困難な入所者43名を順次殺傷した犯行態様の悪質性も甚だしいとした。その上で、計画的かつ強烈な殺意に貫かれた犯行であり、酌量の余地は全くなく、死刑をもって臨むほかないと結論づけた。被告人は控訴したが自ら取り下げ、死刑が確定した。