AI概要
【事案の概要】 原告は、平成24年9月2日、「熱によるS/N比値への影響の少ない低エネルギー粒子放出装置乃至粒子吸収装置」と題する発明について特許出願(特願2012-206227)をしたが、拒絶査定を受けた。原告は拒絶査定不服審判(不服2017-6064号)を請求し、手続補正書により特許請求の範囲等の補正(本件第1補正)を行い、さらに審判請求後にも補正(本件補正)を行ったが、特許庁は本件補正を却下した上で「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。本願発明は、粒子放出・吸収装置において、粒子移動部の断面積をナノサイズにすることで、素子の熱によるS/N比値減少の影響を抑え、擬一次元的なバリスティック運動により高品質な粒子ビームを実現する技術に関するものである。原告は、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 (1) 取消事由1-本件補正を却下したことの誤り(本件補正に係る新規事項の追加の判断の誤り、本件補正発明1の明確性要件の判断の誤り、本件補正発明1の進歩性判断の誤り) (2) 取消事由2-本件第1補正に係る新規事項の追加の判断の誤り 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。 取消事由1について、裁判所は、本件補正は特許請求の範囲についてのみするものであり、本件明細書の段落【0022】、【0024】~【0027】に係る補正は本件第1補正においてなされたものであって本件補正においてされたものではないから、本件審決が新たな技術的事項を導入するものであることを理由に本件補正を却下したことには誤りがあるとした。しかし、独立特許要件について検討し、引用発明1(カーボンナノチューブを用いた電子放出先端部に関する発明)との対比において、相違点1(擬一次元的バリスティック運動に関する構成)は実質的相違点ではなく、相違点2(放出先端部近傍に熱を加えられる部位の有無)は引用発明1から容易に想到できるとして、本件補正発明1は進歩性を欠くと判断した。したがって、本件補正の却下は結論において相当であるとした。 取消事由2について、裁判所は、本件第1補正で追加されたナノワイヤの具体的な材質・構造・寸法等の技術的事項は本件当初明細書に記載がなく、自明でもないから、新規事項に該当すると判断した。原告は既知の科学的説明を加えたにすぎないと主張したが、出願時の明細書に記載されているに等しいといえるものでなければ新規事項であるところ、ナノオーダの構造物の具体的物質、形状、寸法等がそのようなものとはいえないとして、原告の主張を排斥した。 以上により、本件審決は結論において相当であり、原告の請求には理由がないとして棄却した。