雇用契約上の地位確認等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 昭和63年4月に大手広告会社の九州支社に新卒の契約社員として入社した原告が、1年ごとの有期雇用契約を29回にわたって更新し約30年間勤務してきたところ、被告が平成30年3月31日の雇用期間満了をもって雇止めをしたことに対し、労働契約法19条1号又は2号に該当し雇止めは無効であると主張して、雇用契約上の地位確認及び未払賃金・賞与の支払を求めた事案である。被告は、平成24年の労働契約法改正(無期転換ルール導入)を契機に、平成25年4月以降、契約社員の雇用契約の上限を5年とする運用を開始し、原告との間で毎年「2018年3月31日以降は契約を更新しない」旨の不更新条項を含む契約書を取り交わしていた。 【争点】 ①不更新条項への署名等により労働契約終了の合意が成立したか、②労働契約法19条1号(無期契約との同視)又は2号(更新の合理的期待)に該当するか、③雇止めに客観的に合理的な理由及び社会的相当性があるか。 【判旨】 裁判所は、まず争点①について、約30年にわたり雇用契約を更新してきた原告にとって契約終了は生活面・社会的立場に大きな変化をもたらすものであり、合意の認定には慎重を期す必要があるとした。不更新条項への署名は契約更新の条件として事実上拒否できない状況でなされたものであり、直ちに契約終了の明確な意思表示とはいえないと判断した。転職支援会社への登録も雇止めの不安からやむなく行ったものと評価でき、原告は一貫して雇用継続を求める行動をとっていたことから、合意による契約終了は認められないとした。 争点②については、労働契約法19条1号への直接の該当はやや困難としつつ、同条2号の該当性を肯定した。原告は入社以来平成25年まで形骸化した契約更新を繰り返してきており、契約更新への期待は相当に高く合理的な理由に裏付けられていたこと、平成25年以降も「事務職契約社員の評価について」の書面で6年目以降の更新可能性が示されるなど期待が大きく減殺される状況にはなかったことを指摘した。 争点③については、被告が主張する人件費削減や業務効率化の必要性はおよそ一般的な理由にすぎず雇止めの合理性を肯定するには不十分であり、原告のコミュニケーション能力の問題も雇用継続が困難なほど重大とはいえないとした。約30年間雇用を継続しながら適切な指導教育を行ったともいえないことも考慮し、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当とは認められないとして、原告の地位確認請求及び判決確定日までの賃金・賞与の支払請求を認容した。