危険運転致死被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、広島県内の右方に湾曲する道路(制限速度時速50km)において、その進行を制御することが困難な高速度である時速約99kmから112kmで普通乗用自動車を走行させ、カーブに応じて進行させることができず対向車線に進出し、対向進行してきた被害者運転の普通貨物自動車に衝突させ、被害者に緊張性気胸等の傷害を負わせて死亡させたという危険運転致死の事案である。原審(広島地方裁判所)は被告人を懲役5年の実刑に処したところ、被告人側が事実誤認及び量刑不当を主張して控訴した。 【争点】 ①被告人車両の走行速度が「進行を制御することが困難な高速度」に該当するか、②被告人にその故意があったか、③懲役5年の量刑が重すぎて不当か、の3点が争われた。弁護側は、事故原因は速度超過ではなく急ブレーキ又は急ハンドル操作によるものであり危険運転致死罪は成立しないと主張した。また、カーブ手前でブレーキをかけて減速しており十分にカーブを曲がれる速度まで減速できたと認識していたとして故意を争い、仮に有罪としても執行猶予が相当であると主張した。 【判旨(量刑)】 広島高等裁判所は控訴を棄却した。速度の点について、高機能エアバッグセンサーの記録等から、カーブ進入地点での被告人車両の速度は時速約99kmから112km、スリップ開始地点での速度は時速約96kmであり、同地点の限界旋回速度は時速約92kmであったと認定した。鑑定人の証言も踏まえ、限界旋回速度とさほど変わらない速度での走行はわずかな操作ミスで横滑りを起こしかねない状況であり、「進行を制御することが困難な高速度」に該当すると判断した。仮に急ブレーキ等の操作が事故原因であったとしても、それは高速度の運転に誘発されその危険性が現実化したものであるとした。故意の点について、被告人は小型車で時速約129kmという高速度を出しており、エンジン音や風の音等から非常な高速度であることを認識していたと推認し、カーブの存在を知りながらブレーキをかけ続けていたことから故意を認定した。カーブを曲がり切れると誤信したとしても、基礎事実を認識した上での危険性の評価の誤りに過ぎず故意は阻却されないとした。量刑についても、制限速度の約2倍に及ぶ速度等を考慮すれば同種事案の中でも軽い部類ではなく、月300時間超の過酷な勤務状態等を考慮しても懲役5年の実刑は不当とはいえないと判断した。