業務上横領,殺人
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、自身が経営するA社の残土処分場での不法投棄を告発すると脅しながら多額の金銭返済を執拗に請求してきた被害男性(当時76歳)及び同行の被害女性(当時48歳)を殺害しようと決意し、平成26年8月15日、佐賀市内のA社敷地において、被害者両名が乗った軽自動車のルーフに油圧ショベルのスケルトンバケットを振り落とし、同車をキャタピラーで挟み込んで引きずった後、深さ約5mの穴に落とし、上から土砂をかけて埋め、被害者両名を窒息等により死亡させた殺人の事案である。このほか敷鉄板2枚の業務上横領も併せて起訴された。一審の裁判員裁判は被告人を無期懲役に処し、弁護人が殺人の犯人性につき事実誤認を、検察官が死刑を求めて量刑不当をそれぞれ主張して双方が控訴した。 【争点】 弁護人は、被告人は犯行時間帯に現場におらず犯人ではないと主張した。主な争点は、(1)間接事実の積み重ねによる犯人性の認定の当否、(2)被告人の控訴審供述(犯行時間帯に墓参り等で不在であったとのアリバイ主張)の信用性、(3)死刑選択の当否である。弁護人は、犯行準備・隠蔽工作とされた行為はA社の通常業務にすぎず、1人で重機による犯行は成功率が低いことから複数犯の可能性があると主張した。検察官は、前例のない残虐な殺害態様、高い計画性、利欲目的の動機の悪質性等から死刑が相当と主張した。 【判旨(量刑)】 福岡高裁は双方の控訴をいずれも棄却した。犯人性について、犯行現場がA社敷地であり鍵や重機の管理状況から犯人はA社幹部と推認できること、犯行時間帯に被告人のみが現場付近にいたこと、犯行1週間前に被害者両名を呼び出し油圧ショベルの移動や穴掘りを従業員に指示した準備行為、犯行後の油圧ショベル移動・バケット交換・整地等の隠蔽工作、十分な殺害動機の存在を総合し、原審の犯人性認定に論理則・経験則違反はないと判断した。被告人の控訴審アリバイ供述は、自らの日記に「昨日雨で墓参りに行けなかった」との記載があること、産廃業者Bの「お盆に持ち込んでいない」との供述と矛盾すること等から信用できないとした。量刑については、殺害態様は極めて悪い部類に近い残虐なものであるが生き埋めとまでは認定できないこと、計画性は相当程度あるが緻密・巧妙とはいえないこと、動機は身勝手であるが被害男性の理不尽な要求に追い込まれた面もあること等を踏まえ、死刑選択が真にやむを得ないとまではいい難いとした裁判員裁判の判断を尊重し、無期懲役とした原判決の量刑は不当に軽すぎるとはいえないと結論づけた。