覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、親交の深い知人Eから、日本で荷物を受け取り運搬する仕事を紹介され、令和元年5月にアメリカ合衆国から札幌市内の民泊施設宛てに送付された2個の郵便物(荷物①:覚せい剤約900グラム、荷物②:覚せい剤約1091グラム)の受領・運搬に関与した。荷物①は成田国際空港の保税蔵置場で税関職員に発見され配達されなかったが、荷物②は通関を経て被告人が民泊施設で受領した。被告人は荷物②からカップ麺容器に封入された銀色密封袋73袋を取り出し、札幌から鉄道で東京を経て川崎市内へ運搬中、麻薬取締官に任意同行を求められ覚せい剤が発見された。検察官は覚せい剤の営利目的輸入罪及び所持罪で起訴した(求刑:懲役12年及び罰金400万円)。 【争点】 被告人が、荷物①及び荷物②に覚せい剤等の違法薬物が入っている可能性を認識していたか、また荷物②から取り出した銀色密封袋について違法薬物を所持している可能性を認識していたかが争点となった。被告人は、Eからトリュフ等の高級食材であり関税を免れるための仕事であると説明を受け、これを信じていたと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人の違法薬物の認識について合理的疑いが残ると判断し、覚せい剤輸入罪及び所持罪を認めなかった。その理由として、①Eは被告人の家族と親密な関係にあり信頼に足る人物であったこと、②Eが実際に食品関連の仕事に従事していたこと、③勧誘が家族も参加するグループチャットで行われたこと、④第三者(H及びI)に対してもEがトリュフの仕事である旨説明していた裏付けがあること等を挙げた。検察官が指摘する不審な行動(ゴム手袋の着用、銀色密封袋の取扱い、鉄道での長距離移動等)についても、いずれもEの説明を信じた上での指示への従属的行動として説明可能であるとした。覚せい剤所持についても、仮に任意同行直前に違法薬物の可能性を認識したとしても、その期間はわずか1分程度にすぎず、自らの意思に基づく実力支配関係を認定できないとして無罪とした。結論として、被告人には関税法上の無許可輸入の故意のみが認められるとし、罰金100万円を言い渡した(求刑の懲役12年及び罰金400万円から大幅に減軽)。