AI概要
【事案の概要】 本件は、被告(味の素株式会社)が保有するアミノ酸生産菌の構築方法及びL-グルタミン酸の製造方法に関する特許(特許第3651002号)について、原告ら(シージェイジャパン株式会社及びシージェー チェイルジェダン コーポレーション)が特許無効審判を請求したところ、特許庁が審判請求は成り立たないとする審決をしたため、原告らがその取消しを求めた事案である。本件特許は、コリネ型細菌の染色体上のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)遺伝子やクエン酸合成酵素(CS)遺伝子のプロモーター配列の特定領域に変異を導入し、プラスミドを用いずにL-グルタミン酸を高収率で生産する方法に関するものである。 【争点】 (1) サポート要件及び実施可能要件の充足性(GDH遺伝子のプロモーターへの変異導入、CS遺伝子のプロモーターへの変異導入、プロモーター周辺領域の特定) (2) 甲2(コリネ型細菌のプロモーター解析論文)を主引用例とする進歩性の有無 (3) 甲5(α-KGDH活性欠損コリネ型細菌に関する国際公開)を主引用例とする進歩性の有無 (4) 本件発明2及び4の進歩性、サポート要件及び実施可能要件の充足性 【判旨】 知財高裁は、原告らの請求をいずれも棄却した。サポート要件及び実施可能要件については、本件明細書の実施例でGDH遺伝子のプロモーター変異導入株がL-グルタミン酸生産能を増大させたこと、CS遺伝子についてもTCA回路の技術常識に照らしCS活性の増強がグルタミン酸生産の増加に寄与し得ることを当業者は理解できると判断した。原告らが異なる菌株(ATCC13869)で効果がなかったと主張した点については、当業者が通常採用しない培養条件での実験であり、適切な条件では同様の効果が確認されたと退けた。また、TCA回路に律速段階が存在するとの原告らの主張についても、その存在を裏付ける証拠はないとした。進歩性については、甲2には特定遺伝子のプロモーター配列をコンセンサス配列に改変する動機付けがなく、甲2自身にプロモーター活性とコンセンサス配列との類似性に相関が確認できなかった旨の記載があることを指摘し、甲5・甲6・甲8を組み合わせても容易想到とはいえないと判断して、審決を維持した。