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【事案の概要】 原告は、「簡易蝶ネクタイ又は簡易ネクタイ」に関する特許出願(子供用簡易蝶ネクタイの結び目裏側にシャツの第一ボタンがはまり込むボタン穴を形成し、首回りを一周させずに装着できるようにする発明)について拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を請求したが、特許庁は補正を却下した上で審判請求は成り立たないとの審決をした。審決は、本件補正発明が引用発明(甲1:アクリル板製の簡易着用具を用いた蝶ネクタイ)及び甲2〜4記載の事項に基づき当業者が容易に発明できたとして独立特許要件違反を認定し、補正前発明についても進歩性を否定した。原告はこの審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴した。 【争点】 (1) 引用発明の認定の当否(簡易着用具の材質・着用方法の認定) (2) 本件補正発明と引用発明の一致点・相違点の認定の当否(「ボタン穴」の意義、「空洞部分」の有無) (3) 相違点2(ボタンがはまり込む部分の形状)の容易想到性(引用発明1のボタン係合部に甲4発明の釦挿通孔の態様を適用することの可否) (4) 補正要件(新規事項追加の有無)及び補正前発明の進歩性 【判旨】 裁判所は審決を取り消した。まず、引用発明の認定及び一致点・相違点の認定については審決に誤りはないとした。「ボタン穴」の意義については「シャツの第一ボタンがはまり込む穴」という程度の意味であり、糸でかがったり布で縁取ったりしたものに限定されないと判断した。引用発明における「空洞部分」の存在も認めた。しかし、相違点2の容易想到性について、引用発明1(蝶ネクタイの着用具改良)と甲4発明(装身具取付台)とは、課題・作用・機能が大きく異なると指摘した。特に、甲4発明の釦挿通孔は第一ボタンの前部からアプローチして視認できる状態で挿入するものであるのに対し、引用発明1にこれを適用すると、ネクタイ取付部に隠されてボタンを視認できなくなり、着用具へのボタンの係合が切欠き状の場合より困難になることは明らかであるとして、むしろ阻害要因があると判断した。以上から、本件補正発明は当業者が容易に発明できたものとはいえず、審決の判断には誤りがあるとして、他の取消事由を判断するまでもなく審決を取り消した。