AI概要
【事案の概要】 被告人は、元妻Aと再婚後、連れ子である長女B(当時9〜10歳)に対し、約1年2か月にわたり断続的に虐待を繰り返した末、Bを死亡させた児童虐待事件である。被告人は、平成29年11月頃からBへの暴行を開始し(第1)、平成30年7月には家族からの疎外、長時間の起立・屈伸の強要、身体にあざが残る暴力に加え、大便を素手で持たせて撮影するという強要行為に及んだ(第2)。同年12月末から翌1月初めには、Bの両手首をつかんで引きずり床に打ち付けるなどの暴行を加え、顔面打撲及び胸骨骨折(全治約1か月)の傷害を負わせた(第3)。制止しようとした妻Aに対しても暴行を加えた(第4)。その後も不満をBにぶつけ、浴室に立たせ続けるなどの強要行為を行い(第5)、平成31年1月22日から24日にかけて、Bに食事を丸2日間与えず、昼夜を問わずリビングや浴室に立たせ続け、厳冬期に暖房のない浴室に放置し、冷水を繰り返し浴びせるなどして、飢餓状態及び強度のストレスに起因するケトアシドーシス等により死亡させた(第6)。 【争点】 各犯行について被告人が暴行や虐待の事実を否認ないし矮小化する供述をしたため、各犯行の認定が主な争点となった。具体的には、第1の暴行の有無、第2の強要行為の認定、第3の傷害の原因(被告人はBが暴れたことによる自傷と主張)、第6の犯行態様及び被告人の認識(Bを強度に衰弱させることも構わないと考えていたか否か)が争われた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、Bの生前供述や妻Aの証言、法医学的所見等の証拠を総合し、被告人の弁解をいずれも排斥して全ての公訴事実を認定した。量刑においては、傷害致死罪を処断罪とし、本件が約1年2か月にわたる長期間の虐待の末の犯行であること、被告人が児童相談所の介入や実父母の助力を排除してBを社会から孤立させたこと、妻Aへの暴力によりBの最後の救いの手をも奪ったこと、10歳の児童が異常に高い血中ケトン体濃度に達するほどの凄惨で陰湿な虐待であったことを重視した。裁判所は、被告人の意思決定に酌量の余地は一切なく、死者1人の傷害致死罪全体の最も重い部類に位置づけられるべきと判断し、被告人を懲役16年に処した。