AI概要
【事案の概要】 パチンコ店向けの集客用ゲームコンテンツ(スロットゲームの当選画面に特定機種を示唆する画像を表示して来店を促すもの)を開発・販売する原告が、14店舗のパチンコ店を経営する被告に対し、損害賠償4764万円及び謝罪広告の掲載を求めた事案である。 被告の深谷店店長P4は、埼玉県警が実施した管理者講習会に出席した後、被告の各店舗店長ら17名が参加するLINEグループに、講習内容を要約したメッセージを送信した。その中で、原告の商品名を名指しして「X1は禁止」「X4で機種・メーカーを示唆するものは禁止」と記載した。さらに、被告の川越店店長P5が、取材会社2社の担当者にこのメッセージを転送し、うち1社から社外に流出した。原告は、このメッセージの流布により、新規契約の見送りや商談中止、既存契約の更新拒絶といった営業上の損害を被ったと主張した。 原告は、上記行為が不正競争防止法2条1項15号(競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布)に該当するとして同法4条に基づく損害賠償及び同法14条に基づく信用回復措置を、選択的に民法709条・715条1項に基づく使用者責任としての損害賠償を求めた。 【争点】 (1) 原告と被告が不競法上の「競争関係」にあるか (2) メッセージの内容が「虚偽の事実」に当たるか (3) メッセージの送信・転送が「告知又は流布」に当たるか (4) 不法行為責任及び使用者責任の有無 (5) 損害の発生及びその額 (6) 信用回復措置の必要性 【判旨】 請求をいずれも棄却した。 第一に、競争関係について、原告はパチンコ店向け販促ツールの開発・販売業者であり、被告はパチンコ店の経営会社であるから、被告は原告の顧客という関係にあり、同種の商品・役務を提供する関係にはないとした。原告は、被告のグループ会社である訴外シティデザインが原告と競合する事業を行っていると主張したが、裁判所は、グループ各社が親子会社の関係にあるとか実質的に同一の会社であることを示す証拠はなく、訴外シティデザインの事業内容もパチンコ店向け販促コンテンツの作成とは認められないとして、競争関係を否定した。また、P4のメッセージ送信は行政処分回避の注意喚起が目的であり、原告を競争上不利にすることで利益を得る関係にはないと判断した。 第二に、虚偽の事実について、講習会の担当者は原告商品の名称に直接言及していなかったが、映写された規制対象の当選画面が原告商品のものと酷似していたこと等から、P4が原告商品を特定した説明であると理解したことには相応の根拠があり、その理解に基づきメッセージを作成・送信したものであるから、虚偽の事実とはいえないとした。 第三に、不法行為についても、P4の行為は風営法上の行政処分を受けないための社内向け注意喚起であって信用毀損を意図したものではなく、店長LINEは社内共有を前提とするもので外部伝達は予定されていなかったとして、違法性及び注意義務違反を否定した。P5の転送についても、取材会社への確認という正当な目的があり、他への転送禁止を要望していたことから、社会的相当性を逸脱する行為とはいえないとして、使用者責任の成立を否定した。