所得税更正処分取消等請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30行ヒ422
- 事件名
- 所得税更正処分取消等請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2020年3月24日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄差戻
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 A株式会社の代表取締役であったBは、平成19年8月、自己が保有するAの取引相場のない株式72万5000株を有限会社Cに対し、配当還元方式により算定した1株当たり75円(合計5437万5000円)で譲渡した。所轄税務署長は、この譲渡価額が所得税法59条1項2号に定める「著しく低い価額の対価」に当たるとして、類似業種比準方式により算定した1株当たり2505円(合計約18億円)を基に更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。Bの相続人である被上告人らがこれらの処分の取消しを求めた事案である。Aは金属製品等の製造販売を業とする大会社であり、本件株式譲渡の前後を通じて、議決権の30%以上を有する同族株主は存在しなかった。 【争点】 取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項の「その時における価額」を評価通達に基づき算定する際、配当還元方式を適用すべき「少数株主」に該当するか否かの判定を、株式の譲受人(取得者)の取得後の議決権割合で行うべきか、それとも株式の譲渡人の譲渡直前の議決権割合で行うべきかが争われた。原審(東京高裁)は、評価通達188の(3)の文言どおり譲受人であるCの取得後の議決権割合で判定し、Cが少数株主に当たるとして配当還元方式を適用した。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりにより所有者に帰属する増加益を、資産の移転を機会に清算して課税する趣旨のものであり、譲受人の会社への支配力の程度は譲渡人の下に生じている増加益の額に影響を及ぼさないとした。したがって、譲渡所得課税の場面では、相続税や贈与税の課税を前提とする評価通達の定めをそのまま用いることはできず、少数株主に該当するか否かは、株式の取得者ではなく譲渡人について判断すべきであると判示した。所得税基本通達59-6が「同族株主」の判定を譲渡人の譲渡直前の議決権数で行うと定めているのは、この趣旨を示したものであるとした。原審が譲受人であるCの議決権割合に基づき配当還元方式を適用したのは、所得税法59条1項の解釈適用を誤った違法があるとした。 【補足意見】 宇賀克也裁判官は、通達は法規命令ではなく行政規則であり、裁判所を拘束するものではないと指摘し、原審の通達文理解釈原則に疑問を呈した。一方で、相続税法の通達を所得税法に借用する読替え方式が国民にとって分かりにくいことを認め、より理解しやすい仕組みへの改善を求めた。宮崎裕子裁判官は宇賀意見に同調しつつ、通達に従った取扱いが適法となるのは関連法令に合致する限度に限られること、所得税基本通達59-6の「例により」との文言は所得税法の趣旨に沿うよう適切な修正を加えて評価通達を当てはめる意味を含むことを敷衍した。