文書提出命令に対する許可抗告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1許12
- 事件名
- 文書提出命令に対する許可抗告事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2020年3月24日
- 裁判種別・結果
- 決定・破棄差戻
- 原審裁判所
- 札幌高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 北海道旅客鉄道株式会社が開設する病院で、看護師の過失により患者Aが転倒して頭部を床面に強打し死亡したとして、Aの遺族である相手方が同社に対し使用者責任に基づく損害賠償を求める訴訟(本案訴訟)が係属していた。相手方は、転倒によりAが死亡したことを立証するため、司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者がAの死体について作成した鑑定書等及び鑑定嘱託書その他外部から受領した資料並びにこれらの写し(以下「本件文書等」)について、検察官(抗告人)に対する文書提出命令を申し立てた。抗告人は、本件文書等が民訴法220条4号ホに定める「刑事事件に係る訴訟に関する書類」(刑事事件関係書類)に該当するとして提出義務を争った。なお、本件では既に公訴時効が完成し、捜査記録も廃棄されていた。 【争点】 司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定に関して作成・受領した文書等及びその写しが、民訴法220条4号ホに定める刑事事件関係書類に該当するか。該当性の判断に当たり、当該文書等が民事訴訟に提出された場合の弊害の有無を個別に検討すべきか。 【判旨】 最高裁は原決定を破棄し、札幌高裁に差し戻した。まず、民訴法220条4号ホが刑事事件関係書類を文書提出義務の対象から一律に除外した趣旨について、刑事事件関係書類には捜査手法や関係者のプライバシー等に深く関わる事項が記載されることがあり、開示により証拠隠滅や関係者の名誉・プライバシー侵害等の弊害が生じ得るところ、監督官庁が捜査の秘密等との関係からその理由を具体的に示すことが困難な場合があり、裁判所が個別に弊害の有無を判断することも容易でないため、刑事事件関係書類の開示の可否を刑事手続上の開示制度に係る規律に委ねる趣旨であると判示した。そして、刑事事件関係書類該当性の判断に当たっては、民事訴訟に提出された場合の弊害の有無や程度を個別に検討すべきではなく、被告事件もしくは被疑事件に関して作成され又はこれらの事件において押収されている文書等であれば当然に刑事事件関係書類に該当すると解すべきであるとした。本件文書等は司法警察職員からの鑑定嘱託を受けた者が作成・受領したものであり、刑事事件関係書類に該当するとした上で、民訴法220条2号に基づく提出義務の存否を審理させるため差し戻した。 【補足意見】 宇賀克也裁判官(林景一裁判官同調)は、法廷意見に賛成しつつ、既に公訴時効が完成して捜査記録も廃棄され、被害者遺族からの申立てでプライバシー侵害の懸念もほとんどない場合にまで、形式的に刑事事件関係書類に該当するという理由だけで文書提出命令の対象外とされる結果を招きかねないことに鑑み、同号ホに掲げる文書の範囲を限定することについて立法論として再検討されることが望ましいと述べた。