再審請求棄却決定に対する即時抗告申立事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29く121
- 事件名
- 再審請求棄却決定に対する即時抗告申立事件
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年3月24日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 樋󠄀口裕晃、森岡孝介、柴田厚司
AI概要
【事案の概要】 本件は、いわゆる和歌山カレー毒物混入事件等に関する再審請求棄却決定に対する即時抗告事件である。請求人は、平成10年7月25日、自治会の夏祭りで提供されるカレーの入った寸胴鍋に亜砒酸を混入し、住民ら67名を急性砒素中毒にり患させて4名を死亡させたカレー毒物混入事件、及び夫に砒素を混入させたくず湯を食べさせて急性砒素中毒にり患させた殺人未遂事件(A1くず湯事件)等により死刑判決が確定した。請求人は平成21年に和歌山地方裁判所に再審を請求したが、平成29年に棄却され、本件はその棄却決定に対する即時抗告である。弁護人らは、大学教授N1作成の意見書等を新証拠として提出し、確定審で有罪認定の柱とされた亜砒酸の異同識別鑑定(科警研鑑定、P1鑑定、Q1R1鑑定の3鑑定)や毛髪鑑定の信用性を争い、再審開始を求めた。 【争点】 主な争点は、弁護人らが提出した新証拠が刑訴法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当するか否かである。具体的には、(1)亜砒酸の異同識別3鑑定について、請求人の周辺から押収された亜砒酸と現場の青色紙コップ付着の亜砒酸が同一といえるか、混合物の有無や軽元素の含有・濃度の違いから別物といえないか、(2)請求人の毛髪から検出された砒素が外部付着によるものか、(3)新旧全証拠を総合評価しても確定審の有罪認定に合理的疑いが生じるか、が争われた。 【判旨】 大阪高等裁判所は、即時抗告を棄却した。まず、A1くず湯事件について、A1の陳述録取書は控訴審証言と実質的に同一であり新規性を欠くとした原決定を是認した。カレー毒物混入事件については、異同識別3鑑定に関し、嫌疑亜砒酸の原料鉱石に由来する微量元素の構成が酷似するとの認定はなお十分に是認でき、鑑定の証明力が部分的に減退したことは否定し難いものの、その低下は極めて限定的であるとした。混合物の含有の有無や濃度の違いをもって異同識別を論じる弁護人側の主張については、鑑定資料の不均一性や青色紙コップ付着亜砒酸の採取経緯(蒸留水への曝露、人為的選別操作等)に照らし、測定結果が元の亜砒酸の組成比を反映しているとはいえないとして排斥した。毛髪鑑定についても、請求人の毛髪への砒素の外部付着を認めた確定審の判断はなお是認できるとした。その上で、異同識別3鑑定以外の間接事実、すなわち、請求人のみが亜砒酸混入の機会を有していたこと、請求人が希少な亜砒酸を入手可能であったこと、見張り中の不審な言動、近接した時期に4回も砒素を犯罪目的で使用していたこと等を総合すれば、請求人の犯人性は非常に強く推認され、確定審判決の有罪認定に合理的疑いを生じる余地はないとして、新証拠はいずれも明白性を欠くと結論づけた。