三井金属神岡鉱山じん肺損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告三井金属鉱業及びその完全子会社である被告神岡鉱業が所有管理する神岡鉱山(岐阜県飛騨市)において、被告らまたはその下請会社との雇用契約に基づき坑内作業等に従事していた元作業員8名またはその遺族が、被告らの安全配慮義務違反によりじん肺に罹患したと主張し、債務不履行に基づく損害賠償として、各3300万円及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。本件は、先行して提起された第一陣訴訟(平成21年提訴、名古屋高裁で確定)に続く第二陣訴訟であり、原告らはいわゆる包括一律請求の方法により慰謝料を請求した。原告等はいずれも管理区分2以上の決定を受けており、訴訟係属中に3名が死亡した。 【争点】 (1)被告らの安全配慮義務違反の有無(正社員及び下請会社従業員に対する義務を含む)、(2)損害の発生及びその額(じん肺罹患の有無・程度、合併症の有無、包括一律請求の当否)、(3)被告らの連帯責任の有無、(4)喫煙及び防じんマスク不着用による過失相殺の有無、(5)消滅時効の成否。 【判旨】 裁判所は、被告らの安全配慮義務違反を認め、請求を一部認容した。作業環境の管理について、坑内の粉じん対策は一定程度講じられていたものの、粉じん濃度の測定や個人曝露量の管理が不十分であったと認定した。作業条件の管理についても、坑内に食堂を設置して粉じん環境下で休憩させていたこと、能率給制度により粉じん除去作業が軽視される状況があったこと、防じんマスクの着用指導が徹底されていなかったことを指摘した。健康管理についても、継続的なじん肺教育が不十分であり、管理区分2の者への粉じん曝露低減の働きかけがなされていなかったと判断した。下請会社従業員(原告H)に対しても、特別な社会的接触関係に基づき安全配慮義務を負うとした。損害額については、包括一律請求を許容しつつも、管理区分等に応じた類型的慰謝料額を算定し、管理2は1300万円、管理4は2200万円、じん肺死は2500万円、管理2に至らない程度の病変がある者は500万円と認定した。被告らの連帯責任については、民法719条1項後段の類推適用により肯定した。過失相殺については、じん肺死に至った亡Fの喫煙歴について1割の減額を認めたが、防じんマスク不着用は被告らの指導不徹底が要因であるとして減額事由とはしなかった。消滅時効については、最終の行政上の決定時を起算点とし、全員について時効は完成していないと判断した。