退去強制令書発付処分取消等請求、訴えの追加的併合控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、反イルカ漁活動で知られる外国人(被控訴人)が「短期滞在(観光)」の在留資格で日本に入国しようとしたところ、特別審理官が上陸条件に適合しないと認定し、退去命令及び退去強制令書発付処分を受けたことから、これらの取消しを求めた事案の控訴審である。被控訴人は過去に複数回来日してイルカ漁が行われる町を訪れ、イルカ漁の様子を撮影・発信する活動を行っていた。また、反捕鯨団体シー・シェパードの英国リーダーらとともにロンドンで反イルカ漁デモの演説を行ったこともあった。原審は、退去命令及び退去強制令書発付処分を違法として取り消し、国(控訴人)が敗訴部分を不服として控訴した。 【争点】 被控訴人の上陸申請に係る本邦において行おうとする活動が、入管法所定の「観光」に該当するか否か、すなわち、特別審理官による上陸条件不適合認定が適法であるかが争点となった。控訴人は、被控訴人がシー・シェパードとの関係を有すること、過去の来日時に入国目的を偽っていた可能性があること、反イルカ漁活動が地元住民の安寧を脅かすものであったこと、口頭審理での説明が虚偽であったことなどを主張した。 【判旨】 控訴棄却。東京高裁は、入管法7条1項に列挙された上陸条件のすべてについて等しく特別審理官に広範な裁量権が付与されているとはいえないとした上で、「観光」の意義は広辞苑において「他の土地を視察すること。また、その風光などを見物すること。」とされ、その外延はかなり明確であって概括的なものではないから、その適合性判断について広範な裁量権を付与したものとはいい難いと判示した。その上で、控訴人が主張する各事情について個別に検討し、ロンドンでのデモ演説はシー・シェパードとの強い関係や観光を超えた活動のおそれを認めるに足りないこと、過去の来日時に入国目的を偽っていたと認める証拠はないこと、公道から漁協施設を撮影する行為が直ちに地元住民の生活を脅かす行為とは認められないこと、口頭審理での説明は「一般の観光客が行うイルカ漁ウォッチング」とは述べておらず虚偽との主張は前提を欠くことを認定し、いずれも被控訴人が観光を逸脱する活動に及ぶおそれを客観的に推認させる事情とは認められないとして、原判決を相当と判断した。