職務発明対価請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、化学メーカーである被告(株式会社日本触媒)の元従業員である原告が、「多孔質架橋重合体材料の製造方法」に関する職務発明(国内特許3件及び対応外国特許)について、改正前特許法35条3項・4項に基づき、特許を受ける権利の持分の承継に係る相当の対価の一部として約5863万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告は大阪大学大学院修了後、被告に入社し、吸水剤の研究開発に従事していたが、平成12年に退職した。本件各発明は、油中水滴型高分散相エマルション(HIPE)を用いた多孔質材料の製造に関するもので、廃水再使用技術(144号発明)、HIPEの連続重合及びフィルム発明(642号発明)、短時間重合技術(811号発明)の3グループからなる。原審(東京地裁)は約226万円を認容し、双方が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)本件各発明により被告が受けるべき利益の額(被告の実施料相当額の算定方法)、(2)本件各発明について被告が貢献した程度(使用者貢献度)、(3)共同発明者間における原告の貢献度(発明者間貢献度)、(4)原告が支払を受けるべき相当の対価の額である。原告は使用者貢献度50%・発明者間貢献度90%以上を主張し、被告は使用者貢献度99%と主張した。 【判旨】 知財高裁は、原判決を変更し、約256万円の支払を命じた。まず、使用者貢献度について、被告が研究開発基盤を有し、FAMプロジェクトを企画して人的・物的資源を投入したこと、特許の取得・維持等に要した費用等を考慮し、95%と認定した。原告が援用する国立研究機関等の発明者貢献度の基準(20〜50%)については、専ら研究開発を業とする機関と民間営利企業では事情が異なるとして退けた。他方、被告の99%との主張も、発明者らの創意工夫なくして発明完成に至らなかったとして採用しなかった。発明者間貢献度については、144号発明等は4分の1、642号発明等は9分の1、811号発明等は5分の2と各認定した。811号発明等について、プロジェクト管理者Mの共同発明者該当性が争われたが、管理者としての関与にとどまるとして否定した。以上から、対価合計額を約256万円と算定し、原告の控訴を一部認容し、被告の控訴を棄却した。