入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害
判決データ
AI概要
【事案の概要】 X県Y市の財政部技監等の地位にあった被告人が、土木建築工事等を業とするB社の代表取締役A及び同社の積算事務担当従業員Cと共謀の上、Y市が執行した2件の条件付一般競争入札において、入札に関する秘密である設計金額をAに電話で教示し、B社に判断基準額(失格とならない最低金額)と同額ないし近似する額で入札・落札させたという、入札談合等関与行為防止法違反及び公契約関係競売入札妨害の事案である。具体的には、①平成28年11月に執行された甲工事及び②平成29年12月に執行された乙工事の各入札に際し、被告人が決裁段階で知り得た設計金額を私用の手帳にメモした上でAに漏えいし、Aがこれを積算担当のCに伝え、Cが積算ソフトの結果を設計金額に合わせるよう操作して入札額を決定するという手口であった。なお、乙工事の設計金額には市側の違算(5万円低い誤り)があったが、B社の入札額はこの誤った設計金額を基礎とする判断基準額に近似しており、外部からの推測では説明できないものであった。原審(山口地方裁判所)は被告人を有罪としたため、被告人が事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 設計金額をAに教示したのが被告人であるか否か、すなわち被告人の犯人性が争点となった。弁護側は、①甲工事について、A・Cの供述から推認される漏えいの時間的経過と被告人・A間の通話履歴が整合しない、②乙工事について、Aから被告人への発信履歴が証拠上存在しない、③被告人の事務分掌外の別工事でもB社が設計金額を事前に入手していた形跡があり被告人以外の情報源が存在する可能性がある、④被告人以外にもAと頻繁に通話していた市関係者がいる、などとしてA供述の信用性を争った。 【判旨(量刑)】 広島高等裁判所は控訴を棄却した。まず、A供述の信用性について、Aが被告人から設計金額の教示を受けたとする供述は捜査段階から一貫していること、Aが被告人を陥れる動機がないこと、被告人とAの間には歳暮の贈答や度々の訪問など職務上の域を超えた関係があったこと、入札公告から執行日までの間に私用携帯電話で通話していたことなどから、十分信用できると判断した。甲工事については、公告日から積算操作開始日までの間にAから被告人への発信が2回認められ、証拠上の矛盾はないとした。A・Cの供述する漏えいの経過は十数件の工事に共通する一般的な流れを述べたものであり、個別事案で例外があり得ないとは解されないとした。乙工事については、発信履歴が証拠として存在しないことは認定を左右しないとしつつ、原審でその事情を釈明しておくのが望ましかったと付言した。さらに、被告人が私用の手帳に設計金額を記載していた事実について、合理的な必要性が見出し難く、被告人の弁解も不合理であるとして、A供述を補強するものと評価した。以上から、原判決の事実認定に論理則・経験則等に照らし不合理な点はないとして、原判決を維持した。