現住建造物等放火,器物損壊,威力業務妨害,非現住建造物等放火
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、①平成29年4月、非現住建造物である脇屋の外壁付近の藁束にライターで点火し、脇屋及び隣接する現住建造物である母屋を全焼させた現住建造物等放火、②平成30年1月12日、店舗の女子トイレ内のほこり取りクリーナーに火をつけて器物を損壊し、従業員に消火活動を余儀なくさせた器物損壊・威力業務妨害、③同月27日、神社の外壁付近の枯れ葉等にライターで点火し、神社を全焼させた非現住建造物等放火の3件を犯したとして起訴された。いずれも非現住建造物等放火罪による執行猶予期間中の再犯であった。原審(静岡地裁浜松支部・裁判員裁判)は、完全責任能力を認め、被告人を懲役7年に処した。これに対し弁護人が、訴訟手続の法令違反、責任能力に関する事実誤認及び量刑不当を主張して控訴した。 【争点】 第一の争点は、公判中に傍聴人が裁判員2名に対し起訴外の放火事件について一方的に話をした件につき、裁判所がその事実を弁護人に速やかに通知しなかったことが訴訟手続の法令違反に当たるかである。第二の争点は、精神科医が被告人は「病的放火」にり患しており犯行に直接影響を与えたと鑑定意見を述べたにもかかわらず、完全責任能力を認めた原判決に事実誤認がないかである。第三の争点は、懲役7年の量刑が重すぎないかである。 【判旨(量刑)】 東京高裁は控訴を棄却した。訴訟手続の法令違反の主張については、裁判員法上、裁判所には裁判員に生じた事情を訴訟当事者に報告する義務はなく、裁判所は職権で解任手続の要否を判断すれば足りるとした。また、裁判員は証拠裁判主義について適切な理解を有しており、第三者からの一方的な情報提供があっただけで不公平な裁判を行うおそれが生じるとはいえないと判示した。責任能力については、精神鑑定が犯行の一部しか対象としていなかったこと、被告人が犯行を否認していた中で行われたこと、病的放火の診断自体が消去法による幅のあるものであること等から、鑑定意見の参考価値は低いとした。その上で、被告人自身が放火の衝動があっても人がいる等の外部的障害を認識すれば放火しないと述べていることから、行動制御能力に問題はなく、完全責任能力を認めた原判決の結論を是認した。量刑についても、執行猶予中の同種再犯であること等に照らし、懲役7年が不当に重いとはいえないとして、原判決を維持した。