AI概要
【事案の概要】 北海道の太陽光発電事業に関する補助金詐欺事件の差戻し審である。株式会社Aの代表取締役Bは、北海道の条例に基づき、10億円以上を投資して太陽光発電施設を新設・操業した場合に交付される補助金約5957万円を申請した。しかし実際には、資金繰りの悪化からa町施設は工事請負会社Dを通じて第三者に売却されており、Aが同施設を操業している事実はなかった。被告人はBから資金調達等の相談を受けてAの事業に関与していた者であり、B及びCと共謀して虚偽の補助金交付申請を行い補助金を詐取したとして起訴された。差戻し前の第一審では懲役2年・執行猶予4年の有罪判決を受けたが、控訴審は、被告人が補助金申請に反対する趣旨の発言をしていたにもかかわらず、Bとの間で詐欺の意思連絡が成立したと認定するための審理が尽くされていないとして、第一審判決を破棄し差し戻した。 【争点】 被告人とBとの間に、補助金の交付要件を満たさないまま補助金申請に及ぶことについての詐欺の意思連絡(共謀)が存在したか否か。具体的には、(1)被告人が申請に反対した後も不正申請の継続を知っていたか、(2)被告人の関与の意味合い、(3)補助金を折半する合意や半額送金の事実が意思連絡を推認させるかが争われた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人に無罪を言い渡した。まず、被告人は交付要件を満たしていないことの未必的認識は有していたものの、Bに対して要件を満たさない申請には反対する趣旨の発言を繰り返していた。Bは被告人らの反対にもかかわらず不正申請への強固な意図を有しており、被告人に詳細を伝えずに申請に及ぶ動機があった。Bが「体裁を整える」と述べた点も、権利関係を正当に整理する趣旨と理解した可能性があり、不正申請の意味と被告人が認識したとは断定できない。補助金の折半合意についても、正当な補助金受給を前提とした報酬合意であった合理的な疑いが残り、半額送金についても、被告人がAのために行った資金調達交渉等の正当な報酬の残額として受領した可能性がある。以上から、被告人とBとの間に詐欺行為に及ぶ意思連絡があったこと及び被告人に詐欺の故意があったことを認めるには合理的疑いが残るとして、刑訴法336条により無罪を言い渡した。