AI概要
【事案の概要】 本件は、白色系を発光する発光ダイオード(LED)に関する特許(特許第5177317号、発明の名称「発光装置と表示装置」)について、原告(東芝映像ソリューション)が被告(日亜化学工業)に対して請求した特許無効審判の不成立審決の取消しを求めた訴訟である。本件特許は、窒化ガリウム系化合物半導体のLEDチップと、セリウムで付活されたYAG系ガーネット蛍光体(Y及びGdからなる群から選ばれた元素と、Al及びGaからなる群から選ばれた元素を含む蛍光体)を組み合わせて白色系の発光を実現する発光ダイオードに関するものである。原告は、サポート要件違反(無効理由1・2)及び進歩性欠如(無効理由3-1・3-2)を主張した。 【争点】 (1) サポート要件違反の有無(取消事由1:高輝度が本件発明の前提か、取消事由2:「白色系」の意義) (2) 甲13発明(特開平5-152609号)に基づく進歩性欠如の有無(取消事由5〜7:相違点の認定及び容易想到性) (3) 甲14発明(特開平8-7614号)に基づく本件発明2の進歩性欠如の有無(取消事由3・8:「発光ダイオード」の意義及び容易想到性) 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。 サポート要件について、裁判所は、本件発明の課題は光・熱・水分及び直流電界による蛍光体の劣化であり、発光装置が「高輝度」であること自体は本件発明の前提や課題ではないと判断した。本件明細書には実施例8としてYを100%Gdで置換した蛍光体を用いた輝度の低い発光ダイオードが開示されており、これも優れた耐候性を有することが記載されていることを指摘した。また、「白色系」の意義について、明細書の図16の斜線部分は特定の蛍光体と特定波長の発光素子を組み合わせた場合の色再現範囲を示すにすぎず、「白色系」の範囲を画するものではないとし、照明分野では広範な色温度のものが白色光に含まれることから、電球色を含む広範な色温度のものが「白色系」に含まれると解した。 進歩性について、甲13発明は視感度の悪い発光素子の発光光の波長を蛍光体で変換してLEDの視感度・輝度を向上させる発明であり、発光素子からの光と蛍光体からの光を混色させて白色光を得るという技術思想は開示されていないとして、相違点1-1・1-2等の認定に誤りはないとした。YAG蛍光体の採用の容易想到性については、甲1〜5に記載のYAG蛍光体はブラウン管用途であり、甲17〜19に記載のものもレーザディスプレイや低圧水銀放電ランプ用途であって、いずれも発光ダイオードにおける使用環境(蛍光体がLEDチップに近接し強い光に常時さらされる環境)での耐光性について何も開示していないとして、動機付けを否定した。甲14発明に基づく主張についても、同様の理由で容易想到性を否定した。