AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社ベストワン)は、「天地返し仕込」との文字を縦書きにした商標について、指定商品を第30類「みそ」として商標登録出願をしたが、特許庁から商標法3条1項3号(商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)に該当するとして拒絶査定を受けた。原告はこれを不服として審判請求をしたが、特許庁は請求不成立の審決をした。原告は同審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。 【争点】 ①本願商標「天地返し仕込」が商標法3条1項3号に該当するか(商品の品質表示にすぎないか)、②仮に該当するとしても、同条2項(使用による識別力の獲得)により登録が認められるか、の2点が争われた。原告は、味噌の製造工程において「天地返しをして仕込む」という工程は存在しないから「天地返し仕込」は造語であり自他商品識別力を有すると主張した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず3条1項3号該当性について、味噌業界における「天地返し」の用法を詳細に検討した。味噌の製造工程において「天地返し」とは発酵・熟成過程で味噌の上下を入れ替える作業を意味し、品質の均一化等の効果があること、また「仕込(み)」の語は辞書的意味に限られず、「木桶仕込」「杉樽仕込」等のように製造工程における作業や手間を表示するものとしても使用されていることを認定した。そのうえで、「天地返し仕込」は「製造工程において上下方向の位置の入れ替えがされた味噌」という商品の品質を表したものと需要者に認識されると判断した。原告の造語であるとの主張に対しては、一般消費者が天地返しの対象が味噌かその原料かに着目するとは解し得ないとして退けた。次に3条2項該当性については、本件商品の販売期間が3年未満であること、販売地域が1都4県に限定されていること、全国シェアが0.005%に満たないこと、広告宣伝が広く行われた証拠もないことから、使用による識別力の獲得は認められないとした。