AI概要
【事案の概要】 原告(男性)は、平成6年頃から共同生活を送っていた男性(本件被害者)が、原告と交際していた別の男性(本件加害者)に平成26年に殺害されたことを受け、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(犯給法)5条1項1号にいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」として遺族給付金の支給を申請した。これに対し、愛知県公安委員会は、原告が同号の「犯罪被害者の配偶者」に該当しないとして不支給の裁定をしたため、原告がその取消しを求めた行政訴訟である。 【争点】 ①同性の犯罪被害者と共同生活関係にあった者が犯給法5条1項1号の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当し得るか(争点1)、②原告が本件被害者と「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」といえるか(争点2)。原告は、犯給法の立法趣旨、同性間の共同生活関係にも内縁法理が妥当すること、自治体のパートナーシップ制度等の社会状況の変化を根拠に該当性を主張した。被告(国)は、現行民法上の婚姻は異性間を前提としており、内縁関係も異性間のみを予定していると反論した。 【判旨】 裁判所は、犯給法の目的が社会連帯共助の精神に基づく犯罪被害者等の救済にあることを確認した上で、同号該当性の判断には、同性間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るとの社会通念の形成が必要であるとの判断枠組みを示した。その上で、本件処分当時(平成29年)の社会的状況を詳細に検討し、多数の自治体によるパートナーシップ証明制度の創設、民間企業の取組、各種団体の提言、国会での法改正の動き等により同性間の共同生活関係への社会的理解は相当程度進んでいたと評価しつつも、①これらの取組は理解が十分でないからこそ推進されているものであること、②パートナーシップ制度に配偶者控除等の直接的な法的効果は付与されていないこと、③同性婚法制化の具体的見通しが立っていないこと、④世論調査でも賛否が拮抗していたこと等から、処分時点では同性間の共同生活関係を婚姻関係と同視し得るとの社会通念が形成されていたとはいえないと判断し、争点2について判断するまでもなく原告の請求を棄却した。同性パートナーの犯罪被害者給付金受給資格が争われた初の司法判断として注目された事案である。