精神保健指定医指定取消処分取消請求事件(甲事件),戒告処分取消請求事件(乙事件),慰謝料等請求事件(丙事件)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 精神保健指定医の指定を受けていた医師である原告が、厚生労働大臣から、(1)精神保健福祉法19条の2第2項に基づく指定医の指定取消処分(甲事件)、(2)医師法7条2項1号に基づく戒告処分(乙事件)を受けたため、各処分の取消しを求めるとともに、(3)戒告処分に係る国家賠償として110万円の損害賠償を求めた事案(丙事件)である。原告は、C医師が指定医の指定申請時に提出したケースレポートの指導医署名欄に署名したところ、厚生労働大臣は、当該ケースレポートの対象症例についてC医師が「自ら担当として診断又は治療等に十分な関わりを持った症例」(十分な関わり要件)を満たさないにもかかわらず、原告が指導医として署名したことが「指定医として著しく不適当と認められるとき」に該当するとして指定取消処分をし、同一の事実を理由に医師法上の戒告処分も行った。 【争点】 (1)本件症例がケースレポートの十分な関わり要件を満たすか否か、(2)本件指定取消処分における裁量権の逸脱・濫用の有無、(3)聴聞手続等の手続上の違法の有無、(4)本件戒告処分取消請求の訴えの利益の有無、(5)国家賠償法上の違法性及び損害額。 【判旨】 裁判所は、まず十分な関わり要件について、当該申請医自身が当該症例を受け持つ立場で直接的かつ継続的に診断又は治療等に携わった場合をいい、補佐的な立場での関与にとどまる場合は含まれないと解した。その上で、本件病院では複数の医師が主治医となって「屋根瓦方式」で診療を行っており、C医師は中級医として入退院サマリーの作成への関与、下級医との共同診察・指導、酒害教育の実施、治療方針の決定等を行っていたと認定した。C医師の診療録への記載は2回にとどまるものの、複数の医師が一緒に診察した場合に下位の医師が記載する傾向があったこと、他の中級医と比較して記載回数に差がないことなどを考慮し、C医師は中級医として期待される役割を十分に果たしており、補佐的な立場にとどまるものではなかったとして、本件症例は十分な関わり要件を満たすと判断した。したがって、指定取消処分は裁量判断の前提となる重要な事実の基礎を欠くものであり、裁量権の逸脱・濫用として違法であるとして取り消した。戒告処分の取消請求については、戒告処分は告知により完結し、訴えの利益が認められないとして却下した。国家賠償請求については、戒告処分も同一の事実を前提とするところ十分な関わり要件を満たしている以上、重要な事実の基礎を欠く違法な処分であり、公表・報道による名誉毀損等を考慮して慰謝料30万円及び弁護士費用3万円の合計33万円を認容した。