AI概要
【事案の概要】 証券会社Aの従業員であった被告人が、同僚Bらが担当していた株式会社Cによる子会社D株式の公開買付け(TOB)に関する未公表の重要事実を、職務を通じて知り、知人のEに伝達した金融商品取引法違反(公開買付者等関係者による情報伝達)の事案である。Eは、被告人から伝えられた情報に基づき、TOB公表前の平成28年7月28日から8月3日までの間に、D株式合計29万6000株(代金合計約5327万円)を買い付け、TOB公表後に売却して約1540万円の利益を得た。 【争点】 被告人が公開買付けの実施に関する事実を「職務に関して知った」といえるか否かが争われた。弁護人は、被告人はTOBの実施に関する事実を職務上知ったのではなく、自らの知識と推論によりTOBが実施される可能性が高いと予測し、その予測をEに伝達したにすぎないとして無罪を主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、以下の間接事実を総合し、被告人が職務に関してTOBの実施に関する事実を知ったと認定した。まず、7月22日に同僚Bが本件TOBに関する電話をしている最中に、被告人がスタッフィングシート(部内の案件管理表)を閲覧し、直後に「親子上場企業」に関するインターネット検索を開始した。次に、7月27日午後3時台にもスタッフィングシートとR担当表を閲覧して関連検索を行い、同日午後7時台にBがTOBに関する通話をした直後から、検索対象をC関連に切り替え、Cの有価証券報告書やDの株価を調査した。Bの通話時刻と被告人の検索行動が時間的に極めて近接し内容的にも符合していること、被告人はTOB担当部署であるRの構成員として内部者でなければ接し得ない通話内容や内部資料を基に情報を認識したことから、「職務に関して知った」場合に該当すると判断した。また、情報伝達を受けたEの公判供述は、客観的事実との符合や具体的なエピソードに照らし信用できるとした。量刑については、証券市場の公正性・健全性を損ない取引の信頼を揺るがす悪質な犯行であるとしつつ、前科がなく既に退社して異業種に就業していること等を考慮し、懲役2年及び罰金200万円(求刑どおり)、懲役刑につき3年間の執行猶予を言い渡した。