AI概要
【事案の概要】 原告及び被告は、いずれも京銘菓「八ッ橋」を製造販売する京都の菓子メーカーである。被告は、店舗の暖簾や看板等に「創業元禄二年」「since1689」等の表示を付し、商品説明書に八橋検校の没後に元禄2年(1689年)から八ッ橋の製造販売を開始したとする来歴(被告検校説)を記載していた。原告は、被告の創業年や来歴に関する表示には正当な根拠がなく、商品の品質等を誤認させる表示であるとして、不正競争防止法2条1項14号(現行20号)に基づき、表示の差止め・廃棄及び損害賠償600万円を請求した。 【争点】 (1) 不正競争防止法20号の規制対象の範囲(同号の列挙事項は限定列挙か例示列挙か) (2) 被告各表示の品質等誤認表示該当性(創業年や来歴の表示が商品の品質・内容の誤認を招くか) (3) 営業上の利益の侵害の有無及び損害額 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 争点(1)につき、立法経緯や不正競争防止法が刑事罰を含む強力な規制を設けていることに鑑み、20号の規制対象は同号に列挙された事項に限定されると解した。ただし、列挙事項を直接示す表示でなくても、表示の内容が商品の優位性と結びつき需要者の商品選定に影響する場合には、品質等誤認表示に当たる余地があるとした。 争点(2)につき、被告各表示は創業時期や八ッ橋の成り立ちに関するもので、商品の品質・内容を直接表すものではないとした上で、以下の理由から品質等誤認表示には該当しないと判断した。まず、江戸時代の事柄が特段の資料なしに正確にはわからないことは需要者にも経験則上推測できること、八ッ橋の発祥には三河説・検校説など複数の説があり需要者もそれを容易に知り得ること、生八ッ橋のように歴史の新しい菓子もよく売れていることなどから、長い伝統が需要者にとって当然に大きな意味を持つとはいえないとした。さらに、原告提出のアンケート調査でも、菓子の購入時に創業時期を考慮すると回答した者はわずか5〜7%にとどまり、価格や味を重視する回答(約70〜80%)と比べて著しく低いことを指摘した。以上から、被告各表示は需要者の商品選択を左右するとはいえず、品質等誤認表示に当たらないと結論づけた。 また、被告検校説がすべて誤りであるとの確実な証拠もなく、同説を唱えることが正当な根拠に基づかないとか八ッ橋全体の信用性を失わせるとまでは認められないとした。