AI概要
【事案の概要】 原告は保険代理店であり、被告は原告の元従業員である。被告は平成19年にAIU保険会社に研修生として入社し、顧客を開拓した後、平成21年に原告に転職した。被告は原告において損害保険の勧誘・契約締結等の業務に従事し、自ら開拓した顧客(本件顧客情報1)及び原告の既存顧客(本件顧客情報2)を担当していた。被告は平成27年7月に原告を退職し、競合する訴外会社に就職した。退職後、原告の従業員BがLINEを通じて被告に顧客情報を写真で送付し、被告が担当していた全13顧客は平成28年12月までに保険代理店を原告から訴外会社に変更した。原告は、被告が営業秘密である顧客情報を不正に取得・使用したとして、不正競争防止法4条に基づく損害賠償(逸失利益435万9320円及び弁護士費用43万5932円の合計479万5252円)を主位的に請求し、予備的に債務不履行又は不法行為による損害賠償を請求した。 【争点】 (1) 被告がAIU時代に開拓した顧客に係る情報(本件顧客情報1)は原告に帰属するか、(2) 本件顧客情報1・2は不正競争防止法上の営業秘密に該当するか、(3) 被告の行為は同法2条1項4号・7号・8号の不正競争に該当するか、(4) 債務不履行又は不法行為による損害賠償請求の可否、(5) 損害の有無及び額。 【判旨】 裁判所は、本件顧客情報1は保険契約に係る情報を含み原告に帰属すると認定した。また、顧客情報の電子データが複数のパスワード(3か月ごとに変更)で管理され、申込書控えは施錠ロッカーで保管されていたこと、入退社時の誓約書や月1回の情報管理ミーティングへの参加等を総合考慮し、本件顧客情報1・2はいずれも営業秘密に該当すると判断した。 不正競争該当性については、本件顧客情報2(原告の既存顧客3名分)に関し、被告は退職時に原告支給の携帯電話を返却しており、Bから送付された情報以外に顧客情報を保有していた証拠がないことから、Bの送付は不正開示行為(同法2条1項7号)に当たり、被告はこれを知りながら取得・使用したとして同法2条1項8号の不正競争に該当すると認めた。他方、本件顧客情報1(被告開拓の顧客10名分)については、被告が自己所有の携帯電話に連絡先を登録して業務を行っており、退職後も顧客から直接連絡を受けて営業を行ったと合理的に推認されるため、不正競争には該当しないとした。債務不履行・不法行為の主張も同様の理由で退けた。 損害額については、本件顧客情報2の各顧客の年間保険料合計88万4640円の手数料率20%を基に、契約継続期間を5年ではなく2年と認定し、逸失利益35万3856円に弁護士費用15万円を加えた合計50万3856円の支払を命じた。原告の請求額479万5252円に対し、約10分の1の認容にとどまった。