AI概要
【事案の概要】 平成25年台風18号による豪雨で京都府福知山市内の由良川が氾濫し、自宅の床上浸水等の被害を受けた住民7名(原告ら)が、被告(福知山市)に対し損害賠償を請求した事案である。原告らのうち3名(原告A・D・G)は被告から直接土地を購入した「買主原告ら」であり、売主としての説明義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償を請求した。また、原告ら7名全員が、地方公共団体としての情報提供義務違反を理由とする国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を選択的に請求した。被告は、福知山市内の土地区画整理事業等により宅地を造成・販売していたが、同地区が防災ハザードマップ上3〜5mの浸水想定区域であること、平成16年台風で実際に浸水被害が生じていたこと、由良川の堤防が未完成であること等について、十分な説明をしていなかった。 【争点】 (1) 土地の売主としての説明義務違反の有無(不法行為)、(2) 地方公共団体としての情報提供義務違反の有無(国家賠償)、(3) 原告らの損害額、(4) 過失相殺の可否。 【判旨】 裁判所は、争点(1)について、宅地の浸水可能性は購入検討者にとって重大な関心事であり、ハザードマップの情報だけでは購入判断に十分ではないとした上で、被告は売買契約に付随する信義則上の義務として、ハザードマップの内容のみならず、近時の浸水被害状況や今後の浸水可能性に関する情報を開示・説明すべき義務を負っていたと判断した。その上で、原告Aに対しては浸水の恐れを質問されたにもかかわらず堤防完成済みで大丈夫と虚偽の回答をしたこと、原告Dに対しては平成16年台風の浸水被害を説明しなかったこと、原告Gに対してはハザードマップの提示も過去の浸水被害の説明も一切しなかったことをそれぞれ認定し、いずれも説明義務違反を認めた。争点(2)については、災害対策基本法や水防法は土地購入希望者との関係で特別な情報提供義務を課すものではなく、法令上の根拠がないとして、国家賠償請求を棄却した。争点(4)については、原告A・Gは地方公共団体たる被告を信頼したことに落ち度はないとして過失相殺を否定したが、原告Dについてはハザードマップを示されながらそれ以上の調査をしなかった落ち度があるとして3割の過失相殺を認めた。損害については、原告Aにつき432万1743円(建物補修費181万円、動産損害、慰謝料200万円等)、原告Dにつき38万円(慰謝料50万円の3割過失相殺後35万円+弁護士費用)、原告Gにつき341万0400円(建物補修費155万円、慰謝料150万円等)をそれぞれ認容し、被告から直接土地を購入していない原告B・C・E・Fの請求は全て棄却した。