特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「情報処理装置およびその制御方法、プログラム」に関する2件の特許権(特許第4613238号・特許第5307281号)を有する控訴人(キヤノンITソリューションズ)が、被控訴人(デジタルアーツ)に対し、被控訴人の製品が上記各特許発明の技術的範囲に属するとして、特許法100条に基づく製造・販売等の差止め及び廃棄、並びに民法709条及び特許法102条2項に基づく損害賠償1億円の支払を求めた事案の控訴審である。本件各特許発明は、複数の宛先が設定された電子メールについて、個々の送信先に分割した上で制御ルールに従い送出制御を行うことにより、誤送信防止と効率的な電子メール送出を実現する技術に関するものである。原審(東京地裁)は、被告製品等は本件各発明の技術的範囲に属さないとして控訴人の請求を棄却した。 【争点】 主な争点は、(1)構成要件の「送信先」の意義(電子メールアドレスに限られるか、ドメインを含むか)と、被告製品がドメイン単位で分割する構成により構成要件を充足するか(文言侵害の成否)、(2)本件発明の本質的部分の認定と均等侵害の第1要件の充足性である。控訴人は、「送信先」にはドメインも含まれると主張し、仮にそうでないとしても均等論により侵害が成立すると主張した。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却した。文言侵害について、裁判所は、特許請求の範囲の記載上、電子メールに設定されるのは電子メールアドレスであり、ドメイン名のみを設定することは通常行わないこと、明細書においても「送信先」「受信者」「宛先」は同義であり電子メールアドレスを意味すること等から、「送信先」は電子メールアドレスを指しドメインを含まないと判断した。控訴人が根拠とした明細書の【図5】の制御ルール中の「*@zzz.co.jp」との記載についても、これは処理対象の電子メールを特定するための条件定義にすぎず、「受信者」それ自体ではないとした。均等侵害について、裁判所は、本件発明の課題が「誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれていれば、その他の送信先に対するメール送信までもが保留される」ことにあり、その解決手段として電子メールアドレスごとに分割する構成が本質的部分に該当すると認定した。ドメイン単位の分割では同一ドメイン内の個別アドレスへの送出制御ができず課題を解決し得ないことも指摘し、被告製品は本質的部分を備えていないとして均等の第1要件を充足しないと判断した。