議員除名処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 平成31年4月の札幌市議会議員選挙に当選した原告は、第25期第1回臨時会本会議において、出席議員中最年長であったため臨時議長に就任した。原告は、議長選出に際し、各派交渉会で決定された従来の投票方法ではなく、立候補制による議長選挙を独自に提案した。これに対し複数の議員から異議や動議が出されたが、原告はこれらを一切認めず、「決定済み」として他の議員の発言を封殺した。原告を除く出席議員全員が議場を退出し、約8時間にわたり臨時会が空転した後、原告は臨時議長を解任されたが、それでもなお議長席に居座り続けた。札幌市議会はこれらの言動を理由に原告を除名処分とした。原告は、同処分の取消しと、処分以降の議員報酬及び期末手当の支払を求めて提訴した。 【争点】 本件除名処分の違法性。具体的には、(1)除名処分の司法審査における判断枠組み(議会の裁量権の範囲)、(2)本件一連の言動に対して除名処分を科すことの相当性、(3)懲罰手続の適正性が争われた。原告は、臨時議長の解任で足りるにもかかわらず議員の身分を剥奪する除名処分は重きに過ぎると主張し、被告は、議会制民主主義を破壊する計画的かつ悪質な行為であり除名処分は裁量の範囲内であると主張した。 【判旨】 請求認容(除名処分取消し+議員報酬等の支払命令)。裁判所は、まず判断枠組みとして、除名処分は社会通念上著しく妥当性を欠き裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したと認められる場合に違法となると判示した。本件一連の言動については、立候補制の提案自体は臨時議長の職務の範囲内であるが、異議を無視して一方的に決定したと扱い、複数の議員からの動議や反対意見を封殺し続けたことは、臨時議長の職責を果たさず権限を長時間濫用したものであり、懲罰事由に該当すると認定した。しかし、除名処分の相当性については、(1)約9時間の空転はあったものの、最終的に予定された議事は全て行われ流会には至らず市民生活への重大な影響は具体的に生じていないこと、(2)臨時議長解任前に議長席を退かなかった点は法的根拠がないため殊更に悪質とは評価できないこと、(3)懲罰特別委員会において本件言動そのものの悪質性とはいい難い事情(ワイドショー報道や土下座のパフォーマンス性等)まで考慮された疑いがあることを指摘し、本件言動は議員の身分を喪失させるべき程度の悪質性には達しておらず、除名処分は重きに失すると判断した。よって本件除名処分は裁量権の範囲を超え違法であるとして取消し、未払議員報酬等の支払を命じた。