AI概要
【事案の概要】 日立建機株式会社(原告)が、自社の油圧ショベルに約50年にわたり使用してきたオレンジ色(マンセル値:0.5YR5.6/11.2)について、色彩のみからなる商標として商標登録出願をしたところ、特許庁が商標法3条1項3号に該当し同条2項にも該当しないとして拒絶審決をしたため、その取消しを求めた事案である。原告は、油圧ショベル市場で約20%のシェアを有し、50年以上にわたりオレンジ色を車体色として使用してきた実績や、大規模な広告宣伝活動、需要者アンケートで95.9%の認知率を得た結果等を根拠に、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得した(同条2項)と主張した。 【争点】 本願商標(単色のオレンジ色)が、商標法3条2項により使用による自他商品識別力を獲得したといえるか。具体的には、(1)長期間の使用実績・販売台数・広告宣伝により独立した出所識別標識として周知されたか、(2)アンケート結果から識別力の獲得が認められるか、(3)他社による類似色彩の使用状況や公益的観点から独占適応性が認められるか、が争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、原告が約50年にわたりオレンジ色を油圧ショベルの車体色に使用し、一定の販売実績と認知度を有することは認めつつも、以下の理由から商標法3条2項の要件を満たさないと判断した。第一に、原告の油圧ショベルの多くには著名商標「HITACHI」又は「日立」の文字が付されており、オレンジ色の色彩のみが独立した出所識別標識として機能しているとはいえない。第二に、アンケートは油圧ショベルを10台以上保有する者に限定されるなど対象が一部に限られ、質問方法も色彩が出所識別標識として認識されているのか単なる車体色の認識にとどまるのかを区別できないものであった。第三に、オレンジ色はJIS安全色にも採用されるありふれた色であり、住友建機、クボタ、DOOSAN等の他社も油圧ショベルや建設機械の車体色としてオレンジ色を採択しており、原告が独占的に使用していたとはいえない。第四に、建設機械の取引では製品の機能や信頼性が重視され、車体色が商品選択において果たす役割は大きくない。これらを総合し、色彩の自由な使用を不当に制限すべきでないとの公益的要請も考慮して、本願商標は使用による自他商品識別力を獲得したとは認められないと結論づけた。