AI概要
【事案の概要】 指定役務を第44類「心理検査」とする「MMPI」の標準文字からなる商標権を有する控訴人(心理テスト出版社)が、被控訴人(筑摩書房)に対し、被控訴人が心理テスト質問用紙、回答用紙、自動診断システム等に「MMPI-1性格検査」等の標章を付して販売する行為が商標権侵害に当たるとして、商標法36条1項及び2項に基づき、商品の譲渡等の差止め及び廃棄を求めた事案の控訴審である。MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory・ミネソタ多面的人格目録)は、1940年代に米国ミネソタ大学の研究者が開発した質問紙法による性格検査であり、世界90か国以上で使用されている。控訴人は1963年から約50年以上にわたり日本語版を提供してきたが、被控訴人も2017年4月から独自に翻訳・標準化した版の販売を開始した。原審は被告各標章が商標法26条1項3号に該当するとして請求を棄却し、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)本件商標と被告各標章の類否、(2)被控訴人の行為のみなし侵害行為該当性、(3)被告各標章の商標法26条1項3号(役務の質の表示)該当性、(4)同項4号・6号該当性、(5)無効の抗弁の成否である。中心的争点は、被告各標章における「MMPI」の文字部分が心理検査の「質」を普通に用いられる方法で表示するものとして同法26条1項3号に該当するか否かであった。控訴人は、「MMPI」の表示はミネソタ大学の許諾を受けた控訴人の業務を示すものとして識別力・独占適応性を有し、同号に該当しないと主張した。 【判旨】 控訴棄却。知財高裁は、精神医学・心理学等の辞典類や専門書等において「MMPI」はミネソタ大学の研究者が開発した心理検査の略称として広く記載されており、需要者(医師、公認心理師、臨床心理士等)の間では心理検査の一手法を示すものとして広く認識されていたと認定した。控訴人自身の質問票、カタログ、マニュアル、広告等においても「MMPI」の文字部分は心理検査の一手法としての本件心理検査を表示したものと理解されるにとどまり、「MMPI」そのものが控訴人の開発・標準化した検査であることを示す記載は見当たらないとした。控訴人が主張する「一国一検査の原則」についても、その存在を認めるに足りる証拠はなく、ミネソタ大学が質問票の著作権を有することと「MMPI」の商標使用にミネソタ大学の許諾が必要であることとは別の問題であるとした。以上から、被告各標章における「MMPI」の文字部分は心理検査の「質」を普通に用いられる方法で表示するものであり、商標法26条1項3号に該当するとして、本件商標権の効力は被告各標章に及ばないと判断した。