AI概要
【事案の概要】 平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴い、東京電力が設置・運営する福島第一原子力発電所から放射性物質が放出される事故(本件事故)が発生し、福島県内の自主的避難等対象区域及び区域外に居住していた原告ら(54名)が避難を余儀なくされたとして、被告東京電力ホールディングスに対しては民法709条(主位的)及び原子力損害賠償法3条1項(予備的)に基づき、被告国に対しては経済産業大臣が電気事業法等に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるとして国家賠償法1条1項に基づき、連帯して損害賠償を求めた事案である。 【争点】 主な争点は、(1)被告東電の民法709条に基づく責任の有無、(2)被告国の規制権限不行使の違法性(経済産業大臣が電気事業法39条に基づく省令改正権限又は同法40条に基づく技術基準適合命令を行使し、建屋等の水密化措置を採らせるべき義務があったか)、(3)津波の予見可能性の有無及び程度、(4)結果回避可能性の有無、(5)原告らの損害額である。 【判旨】 裁判所は、まず被告東電の民法709条に基づく責任について、原子力損害賠償法は民法の不法行為規定の特則であり、同法が適用される範囲では民法の適用は排除されるとして、主位的請求を棄却した。予備的請求の原賠法3条1項に基づく請求については、同法の無過失責任の規定により被告東電の責任を認めた。 被告国の責任については、経済産業大臣は平成14年末頃には地震調査研究推進本部の長期評価に基づく試算を指示することで、福島第一原発の敷地高さ(O.P.+10m)を超える津波の到来を予見することが可能であったと認定した。しかし、長期評価の見解は関係団体や専門家からおおむね消極的ないし懐疑的に見られており信頼性が高いとは評価されていなかったこと、福島県沖での発生確率は30年以内で6%程度にとどまり切迫した危険性の認識は困難であったこと、予見し得た想定津波と実際の津波とでは規模や到来方向に大きな違いがあり防潮堤設置や水密化措置による事故回避の可能性は低いこと等を総合考慮し、経済産業大臣の規制権限不行使が許容限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められないとして、被告国の責任を否定した。 損害については、原告ら54名中24名について、被告東電の既払賠償額を超える損害を認め、原賠法3条1項に基づき認容した。