AI概要
【事案の概要】 大正7年生まれの被相続人は、平成24年に死亡し、妻、長女、長男、二男及び養子(二男の長男)の5名が相続人となった。相続財産には、被相続人が相続開始の約3年半前に約8億3700万円で購入した東京都杉並区の不動産(甲不動産)と、約2年半前に約5億1900万円で購入した川崎市の不動産(乙不動産)が含まれていた。控訴人らは、これらの不動産を財産評価基本通達(評価通達)に基づき、甲不動産を約2億円、乙不動産を約1億3366万円と評価して相続税の申告を行い、基礎控除により相続税は課税されないとした。しかし、処分行政庁は、評価通達の定めによる評価が著しく不適当であるとして、評価通達6に基づき国税庁長官の指示を受けた上で、不動産鑑定評価額を時価として更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。控訴人らがこれらの処分の取消しを求めたところ、原審(東京地裁)が請求を棄却したため、控訴した事案である。 【争点】 (1) 本件各不動産の相続税法22条に規定する時価について、評価通達の定めによらずに鑑定評価額をもって時価とすることが許されるか(評価通達6の適用の可否)。控訴人らは、「特別の事情」の判断基準が一般化されていなければ租税法律主義に違反すること、相続開始前後の事情や租税回避の意図は「特別の事情」に当たらないこと、通達評価額と鑑定評価額の3〜4倍の開差は周辺物件にも普遍的に存在し「特別」とはいえないことなどを主張した。 (2) 処分行政庁が国税庁長官の指示を受ける前に不動産鑑定を実施したことが、評価通達6の手続に違反するか。 (3) 本件各更正処分等の理由の提示に違法がないか。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、以下のとおり判断した。争点(1)について、相続税法22条は財産の価額を時価によるとし、評価通達6は通達による評価が著しく不適当な場合に他の方法による評価を認めている。本件では、通達評価額と鑑定評価額・取引額との間に著しい乖離があり、これにより相続税額に2億4000万円超の差が生じていること、被相続人及び控訴人らが相続税の負担を減じ又は免れさせることを知り、かつ期待して不動産の購入及び借入れを企画・実行したと認められることからすると、評価通達による評価は実質的な租税負担の公平を著しく害し、法の趣旨及び評価通達の趣旨に反する「特別の事情」があると認められる。また、「特別の事情」の基準が通達等であらかじめ示されていなくても租税法律主義に違反しない。争点(2)について、評価通達6の「国税庁長官の指示」は行政組織内部の指示・監督に関する定めであり、その有無は更正処分の効力に影響しない。争点(3)について、本件各通知書の理由の提示は行政手続法14条1項の趣旨が求める程度に具体的に記載されており、違法はない。