AI概要
【事案の概要】 ウェブサイト上でメールマガジンを配信していた原告が、被告(株式会社サイバーエージェント)が提供するウェブサイト作成サービス「Ameba Ownd」を利用して開設されたサイトに、原告のメールマガジンが無断で転載されたとして、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)4条1項に基づき、サイト開設者(本件登録者)が登録した氏名又は名称(発信者情報1)及び電子メールアドレス(発信者情報2)の開示を求めた事案である。本件サイトは平成13年頃に開設され、原告がその頃以降に創作したほぼ全てのメールマガジンが無断転載されていた。被告は、少なくとも電子メールアドレスを保有していることは認めたが、氏名又は名称の保有は否認した。 【争点】 主な争点は、(1)被告が発信者情報1(氏名又は名称)を保有しているか、(2)登録情報が同法4条1項の「発信者情報」に当たるか、(3)開示を受けるべき正当な理由があるかの3点である。特に争点(2)では、サイト開設時の登録情報が、実際に権利侵害情報を発信した者の情報といえるかが問題となった。原告は、サイト登録者と記事投稿者が同一である蓋然性が高く、「発信者」を厳密に投稿者本人に限定すると開示制度が機能しなくなると主張した。被告は、登録情報は記事投稿時の発信者情報ではなく、サイトには複数人が投稿する可能性もあるとして、「発信者情報」に当たらないと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず争点(1)について、Ameba Owndの利用規約を精査しても会員登録時に氏名又は名称の登録が必要であることを示す定めは見当たらず、被告が発信者情報1を保有しているとは認められないと判断した。次に争点(2)について、法2条4号が「発信者」を特定電気通信設備に情報を記録・入力した者と明確に定義している趣旨に照らし、省令3号の「発信者の電子メールアドレス」の「発信者」も法2条4号の定義どおりに解すべきであるとした。その上で、本件サイトの開設に当たり氏名又は名称が提供されず電子メールアドレス等のみが提供されている状況では、登録者が真に本人の電子メールアドレスを提供したかに合理的疑いが残ること、利用規約上も登録情報が本人のものであることを確認する仕組みがないこと、本件サイトが違法な無断転載目的で開設されたことがうかがわれ他人や架空のアドレスが登録された可能性を否定し難いことを指摘し、被告保有の電子メールアドレスは法2条4号の「発信者」のものとはいえず、省令3号の「発信者の電子メールアドレス」にも当たらないと結論づけた。本判決は、コンテンツ投稿型サービスにおいて登録情報の本人性確認が不十分な場合、発信者情報開示請求が認められにくいことを示した事例であり、プロバイダ責任制限法における「発信者」概念の厳格な解釈を採用した点に実務上の意義がある。