AI概要
【事案の概要】 本件は、日本製紙クレシア株式会社(原告)が保有する「ロール製品パッケージ」に関する特許(特許第6313029号)について、特許異議申立てを受けた特許庁が訂正を認めた上で請求項1~5に係る特許を取り消す決定をしたため、原告がその取消しを求めた訴訟である。本件特許は、長巻のトイレットペーパー等のロール製品を包装するパッケージに関する発明であり、ポリエチレン製フィルムの密度・坪量・厚さやロール製品の巻き硬さ等の数値範囲を特定することにより、持ち運び時にフィルムが破れにくく、かつゴワゴワせず、ロール製品が潰れにくいパッケージを実現することを目的としていた。特許庁は、サポート要件違反(特許法36条6項1号)及び実施可能要件違反(同条4項1号)を理由に特許を取り消した。 【争点】 主な争点は、(1)サポート要件違反の有無(明細書の実施例に基づく官能評価から、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できるか)、(2)実施可能要件違反の有無、(3)異議手続における手続違背の有無の3点である。特に、明細書に記載された「フィルムの強さ」の官能評価が、持ち運び時のフィルムの破れにくさを評価したものといえるか、また、キャラメル包装で持手部のあるパッケージを用いた評価結果が、ガゼット包装や持手部のないパッケージにも妥当するかが中心的に争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、まず本件発明の課題として、フィルムが破れにくいこと、ゴワゴワしないこと、ロール製品が適度な巻き硬さを有すること、ロール製品が潰れにくいことの4点を認定した上で、「フィルムが破れにくい」という課題の解決について詳細に検討した。裁判所は、明細書の官能評価が、持手部付きキャラメル包装パッケージの持手部を持って運搬した際の、持手部と包装袋の接合部分におけるフィルムの破れを評価したものと認定した。その上で、(1)ガゼット包装パッケージでは、消費者が指掛け穴に指を引っ掛けて運搬するため、その部分の破れにくさも検討が必要であるところ、穴の形状や指の引っ掛け方によって負荷の程度が異なり、上記官能評価の結果からガゼット包装パッケージの破れにくさは認められないとした。(2)持手部のないキャラメル包装パッケージについても、消費者がフィルムを直接掴んで運搬する場合の接触部分は上記官能評価の対象部分と形状・面積が異なり、またポリエチレンは滑りやすいため指に必要以上の力が入ることから、同様に破れにくいとはいえないとした。以上から、本件発明はサポート要件に適合せず、特許を取り消した決定は相当であると判断した。