投稿記事削除請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1ネ4733
- 事件名
- 投稿記事削除請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年6月29日
- 裁判種別・結果
- その他
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 第1審原告は、過去に建造物侵入(女湯脱衣場への侵入)の被疑事実で逮捕され、罰金10万円の刑が確定した者である。ツイッター上に第1審原告の実名入りで本件逮捕に関する記事が複数投稿され、公衆が閲覧可能な状態に置かれていた。第1審原告は、逮捕歴というプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益が侵害されていると主張し、ツイッターを管理運営する第1審被告に対し、人格権に基づく妨害排除請求として各投稿記事の削除を求めた。第1審(原審)は請求を全部認容したため、第1審被告が控訴した。なお、控訴審において、既に閲覧不能となっていた5件の投稿記事については第1審原告が訴えを取り下げ、残る投稿記事の削除請求が審理の対象となった。 【争点】 ツイッター上にプライバシーに属する事実(逮捕歴)を含む投稿記事を表示し続けることが違法か否か、すなわち、逮捕事実を公表されない法的利益が投稿記事を閲覧に供し続ける理由に優越することが明らかといえるかが争点となった。第1審原告は、プライバシー権は物権と同様の排他性を有する権利であり、投稿者への損害賠償請求が認められない場合でも差止請求は認められると主張した。一方、第1審被告は、差止請求は損害賠償のみでは救済が不十分な場合に初めて認められるべきであり、より厳格な違法性判断が必要であると主張した。 【判旨】 東京高裁は、原判決を取り消し、第1審原告の請求を全部棄却した。まず、ツイッターはその検索機能と併せてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしており、投稿記事の削除を命じることはその役割に対する制約になると指摘した。そのうえで、プライバシーに属する事実を含む投稿記事の違法性は、事実の性質・内容、伝達範囲と具体的被害の程度、社会的地位や影響力、投稿の目的や意義、社会的状況の変化等の諸事情を比較衡量して判断すべきであり、削除が認められるのは公表されない法的利益が優越することが「明らか」な場合に限られるとした。本件では、建造物侵入は軽微な犯罪とはいえず、投稿記事は公共の利害に関する事実に係り公益目的で投稿されたこと、既にグーグル検索では本件逮捕に関する情報が表示されなくなっており具体的不利益を受ける可能性が低下していること等を考慮し、罰金納付から5年経過による刑の消滅後さらに約3年が経過した点を踏まえても、法的利益の優越が明らかとはいえないと判断した。また、プライバシー権が物権と同様の排他性を有するとの主張も採用しなかった。