職務発明対価請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30ネ10062
- 事件名
- 職務発明対価請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年6月30日
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、ソニー株式会社(一審被告)の元従業員である一審原告が、非接触型ICカード技術「FeliCa」に関する職務発明(11件の特許)について、特許を受ける権利をソニーに承継させたことにつき、改正前特許法35条3項に基づく相当の対価の未払分として5億円(控訴審では3億円に減縮)の支払を求めた事案の控訴審である。FeliCaは、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードや電子マネーカードに広く採用されている技術であり、ICチップ、アンテナモジュール、ICカード、リーダライタ等の製品群に実装されている。原審(東京地裁)は約3181万円を認容し、双方が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品における本件発明の実施の有無(特にFeRAM搭載製品や発券機能付きリーダライタの間接侵害該当性)、(2)特許登録前の実施に対応する相当対価支払請求権の消滅時効の成否、(3)独占の利益の算定方法(売上高の算定基礎、超過売上割合、仮想実施料率)、(4)FeliCa子会社への実施権現物出資に伴う利益の評価、(5)第三者へのOSライセンスに伴う利益、(6)使用者の貢献度及び共同発明者間の貢献割合、(7)遅延損害金の起算日である。 【判旨】 知財高裁は、原判決を一部変更し、約2959万円の支払を命じた。主要な判断は以下のとおりである。 消滅時効について、被告の発明考案規定は特許登録前後の実施を区別せず報奨金を支給する趣旨と解されるところ、被告が訴訟提起後の平成28年まで報奨金を支払っていたことは債務の承認又は時効援用権の放棄に当たるとして、時効の完成を否定した。 独占の利益の算定では、売上高はICチップの単価を基礎とし、超過売上割合は40%を維持した。仮想実施料率については、ロイヤルティ料率データハンドブック等の統計資料やIT業界の実務を参考に、11件の特許全体で3.3%(1件当たり0.3%)と認定した(原審の0.8%から引き下げ)。特許登録前の出願公開後の期間については、補償金請求権の存在を考慮して登録後の2分の1の限度で独占の利益を認めた。子会社への現物出資に伴う利益は、本件特許の技術的価値の高さを考慮し、単純な件数割りではなく出資対象実施権の半分の価値と評価した。使用者の貢献度は95%(発明者の貢献度5%)を維持し、共同発明者間の貢献は均等と判断した。一審原告の控訴は棄却され、一審被告の控訴に基づき認容額が減額された。