AI概要
【事案の概要】 本件は、印刷物上のドットパターンをペン型デバイスで読み取り音声を再生する技術に関する特許権侵害訴訟である。ドットパターン技術の研究開発等を行う原告(グリッドマーク株式会社)が、「ドットパターン」に関する特許権(第4392521号)、「音声情報再生装置」に関する特許権(第4817157号)、「ドットパターン」に関する特許権(第4899199号)、及び「ドットパターンが形成された媒体」等に関する特許権(第5259005号)の計4件の特許権に基づき、英語教材の販売等を行う被告(ワールド・ファミリー株式会社)に対し、被告が製造・販売する「ミッキー・マジックペン・セット」等の製品が上記各特許権を侵害すると主張して、製品の製造・販売等の差止め及び廃棄、並びに損害賠償1億円(18億3333万3332円の一部請求)の支払を求めた事案である。被告製品は、絵本やカードに印刷された微細なドットパターンをマジックペンで読み取ると英語音声が再生される幼児向け英語教材であり、台湾企業の子会社(ソニックステクノロジー株式会社)がデコーダIC等を製造していた。 【争点】 主な争点は、(1)被告ドットパターンが本件発明1の技術的範囲に属し、被告マジックペンが本件発明2の技術的範囲に属するか、(2)被告ドットパターンが本件発明3の技術的範囲に属し、被告媒体が本件発明4の技術的範囲に属するか、(3)被告マジックペンが本件発明5の技術的範囲に属するか、(4)本件各特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(補正要件違反、サポート要件違反等)、(5)損害額である。裁判所は争点(4)の無効理由の有無を中心に判断した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。本件特許1及び2については、出願後の補正(本件補正1及び2)が補正要件(特許法17条の2第3項)に違反すると判断した。具体的には、明細書に記載された図5ドットパターンと図105ドットパターンは情報ドットのずらし方、格子ドットの配置方法等の情報定義方法が相当に異なるところ、補正後の特許請求の範囲はこれら2つの異なるドットパターンの構成要件を組み合わせたものであり、当初明細書にはそのような組み合わせについて何ら記載がなく、それが当業者に自明であるともいえないため、新たな技術的事項を導入するものであると認定した。本件特許3及び4については、サポート要件(同法36条6項1号)に違反すると判断した。「ずらし方によって前記ドットパターンの向きを意味している」等の構成要件について、明細書中にその具体的記載がなく、図105ドットパターンに関するキードットの記載は本件発明3〜5とは異なるドットパターンに関するものであって、当業者がこれをもって上記構成要件が開示されていると理解することはできないとした。以上により、本件各特許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものであり(同法123条1項1号・4号)、原告は特許権を行使できないと結論づけた。