法人文書開示決定の不開示処分取消請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30行コ276
- 事件名
- 法人文書開示決定の不開示処分取消請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年6月30日
- 裁判官
- 岩井伸晃、西森政一
AI概要
【事案の概要】 社会保険労務士である控訴人が、日本年金機構(被控訴人)に対し、独立行政法人等情報公開法に基づき、障害基礎年金の認定審査を行う医師(障害認定医)の氏名及び勤務先を記載した名簿の開示を請求した事案である。被控訴人は当初全部不開示としたが、異議申立てを受けて一部開示決定を行い、認定医の氏名欄及び勤務先欄については不開示とした。控訴人は、この不開示部分の取消しと開示決定の義務付けを求めて出訴した。原審(東京地裁)は義務付け請求を却下し、取消請求を棄却したため、控訴人が控訴した。障害認定医は、かつて社会保険庁時代には非常勤の国家公務員として氏名が開示されていたが、平成22年の日本年金機構設立後は業務委託契約の受託者となり、平成25年頃から被控訴人は氏名等を不開示とする方針に転換していた。 【争点】 主な争点は、障害認定医の氏名及び勤務先の情報が、(1)法人等情報公開法5条4号柱書き所定の不開示情報(事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報)に該当するか、(2)同法5条1号所定の不開示情報(個人識別情報)に該当するか、(3)開示決定の義務付けの訴えの適法性である。控訴人は、過去に開示されていた慣行があること、石綿確定診断委員会の委員や地方労災医員の氏名は開示されていること、障害者の生存権に関わる情報であること等を主張した。 【判旨】 東京高裁は控訴を棄却した。まず争点(1)について、障害認定医の氏名や勤務先等が開示された場合、裁定請求者やその代理人等が認定医に対して有利な意見を出すよう働きかけたり、審査内容について苦情・クレームを述べたりすることにより、認定医の公正中立な業務遂行に支障が生ずることが現実的な蓋然性として十分に想定されると判断した。具体的には、不支給決定を受けた者が認定医の勤務先を訪問した事例、認定医の氏名を知った医師がブログ等で批判・非難した事例、診断書の記載変更を強要・威嚇した事例等を認定した。また、氏名開示により認定医を辞退する者が相当数生ずることが見込まれ、後任確保も困難になると認定した。これらを総合し、支障の程度は名目的なものではなく実質的であり、おそれの程度も法的保護に値する蓋然性を有すると判断して、不開示情報該当性を認めた。争点(1)で不開示情報該当性が認められたため、争点(2)については判断せず、争点(3)の義務付けの訴えも要件を欠き不適法とした。