AI概要
【事案の概要】 原告(日本ゼオン株式会社)は、「リチウムイオン二次電池用正極およびリチウムイオン二次電池」との名称の発明について特許出願(特願2013-81957号)を行ったが、拒絶査定を受けたため、拒絶査定不服審判を請求した。特許庁は、本願発明が引用文献1(特開2012-221672号)に記載された発明と、引用文献2(特許第4621896号)及び引用文献3(特開2013-8485号)に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明できたものであるとして、特許法29条2項により特許を受けることができないとする審決をした。本願発明は、正極活物質・結着材・導電助剤を含むリチウムイオン二次電池用正極に関し、導電助剤として特定の直径分布(3σ/Av値が0.50〜0.60)・比表面積・純度を有するカーボンナノチューブを用い、結着材として特定のヨウ素価を有する水素化ジエン系ポリマーを用いることを特徴とする。原告は、審決の相違点の認定及び容易想到性の判断に誤りがあるとして、審決の取消しを求めて出訴した。 【争点】 (1) 引用発明との一致点・相違点の認定の誤り及び相違点の看過(取消事由1) (2) 相違点1(カーボンナノチューブの物性値)の容易想到性判断の誤り(取消事由2) (3) 相違点2(結着材の構成)の容易想到性判断の誤り(取消事由3) (4) 作用効果についての判断の誤り(取消事由4) 【判旨】 知財高裁は、取消事由2に理由があるとして審決を取り消した。まず取消事由1については、引用文献1の明細書にカーボンナノチューブの炭素純度99.9%以上が望ましい理由が明確に記載されていることから、当業者がこれを誤記と認識するとは考えられないとして、審決の一致点・相違点の認定に誤りはないと判断した。次に取消事由2については、審決が引用文献2の実施例1のカーボンナノチューブ(甲2実施例1CNT)と本願明細書記載のSGCNT-1の製造条件が記載限度で同一であることを根拠に両者の物性値(3σ/Av値)が同一であると認定した点を検討した。裁判所は、引用文献2には3σ/Av値の記載がなく、むしろ図9に示されたサイズ分布評価の一例から算出される3σ/Av値は0.91であり本願発明の規定(0.50〜0.60)を満たさないこと、記載された製造条件が全条件ではなく記載条件が同一でも物性値が同一になるとは限らないことは技術常識として当然想定される事柄であることを指摘し、甲2実施例1CNTが本願発明の物性要件を満たすとはいえないとした。さらに、引用文献1及び2に、引用発明の導電助剤として甲2実施例1CNTを適用する動機付けとなる示唆がなく、技術分野の関連性は限定的で、課題及び作用・機能も共通しないとして、容易想到性を認めた審決の判断には誤りがあると結論づけた。