公務員に対する懲戒処分取消等請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成31行ヒ97
- 事件名
- 公務員に対する懲戒処分取消等請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 裁判年月日
- 2020年7月6日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄自判
- 原審裁判所
- 大阪高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 兵庫県姫路市の市立中学校の教諭であった被上告人(原告)は、顧問を務める柔道部において、上級生の部員D及びEが下級生のAらに対し日常的に暴力行為を伴ういじめを行い、Aに全治1か月の胸骨骨折を負わせる傷害事件が発生した際、その事実を把握しながら、A及び副顧問の教諭に対し、受診時に医師に「階段から転んだことにしておけ」と虚偽の説明をするよう指示し、自らも医師に電話で虚偽の説明をした(非違行為1)。また、校長が加害生徒Dの近畿大会への出場を禁止する職務命令を発したにもかかわらず、これに従わずDを出場させ(非違行為2)、さらに、校長からの柔道部関連物品の撤去指示にも長期間対応しなかった(非違行為3)。兵庫県教育委員会はこれらを理由に被上告人を停職6月の懲戒処分に付した。被上告人は処分が重きに失するとして、処分の取消し及び国家賠償を求めて提訴した。第1審は請求を棄却したが、原審(控訴審)は処分を取り消し、国家賠償請求も一部認容した。 【争点】 停職6月の懲戒処分が、社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとして違法といえるか。 【判旨】 最高裁は、原判決中の上告人(県)敗訴部分を破棄し、被上告人の控訴を棄却した。まず非違行為1について、被上告人の虚偽説明の指示は、大会を目前に控え主力選手らの不祥事が明るみに出ることを免れようとする意図をうかがわせ、被害生徒の心情への配慮を欠くとともに、副顧問による校長等への報告を暗に妨げるものであり、いじめ防止対策推進法や兵庫県いじめ防止基本方針等に反する重大な非違行為であるとした。また、医師に実際の受傷経緯が伝わらなければ誤診や不適切な治療のおそれも生じさせるものであったと指摘した。結果的に組織的対応に支障が生じなかったとしても非違行為の重大性は否定されないとした。非違行為2についても、重大な非行に及んだ加害生徒の試合出場を禁じた校長の職務命令は正当であり、被害者の保護者がDの出場を支持していたこと等を考慮しても、命令に反して柔道部の活動や加害生徒の利益を優先させた非違の程度は軽視できないとした。非違行為3も含め、一連の各非違行為は公立学校の教職員にふさわしくない行為として強い非難に値するとし、原審が酌むべき事情として指摘した点は殊更に重視することは相当でないと判断した。以上を踏まえ、県教委が停職6月の量定を選択したことは社会観念上著しく妥当を欠くとまではいえず、懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとはいえないと結論づけた。裁判官全員一致の意見である。